第3話


 ――今にしても思うと、出来事……という大袈裟なモノでもなかった様な気もするけど。


 転校して、有紀人となんだかんだ仲良くなったある日。私はクラスの女子に呼び出された。


 その理由は「有紀人と仲良くするな」という一種の忠告の様なモノ。


 このくらいの年頃になると、女子は女子。男子は男子で行動する様になり「恋」にも目覚め始める。


 ――多分、あの子たちも有紀人が好きだったんだろうなぁ。


 今となってはそれも分かるのだけれど、この時の私はそもそも「有紀人が私にくっついている」と思っていたので、適当に聞き流した。でも、コレが良くなかったらしい。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「はぁ」


 ため息をつきつつ上を見上げると、そこには青い空が広がっている。


「……」


 その日の放課後、私は一人でいるところに「先生が呼んでいる」とクラスの子に言われ、体育館の隣にある倉庫に呼び出され……閉じ込められた。


 しかも、その日の放課後は「委員会」というモノがあり、基本的に生徒はどこかの委員会に入らないといけないらしいのだが、私は「転校生」という事もあり、入っていなかった。


 ――そこを狙われたんだろうなぁ。


 ただ、それを伝えてきた子は、私に忠告してきたグループの子たちじゃなかったため、完全に油断していたという事もある。


 ――でもまぁ、待っていればいつかは出られただろうし。


 そもそも、私が「いくら経っても帰って来ない」となれば、家族が心配するのは目に見えていた。だから実はそこまで深刻に考えていなかったのだけれど。


 確かに「閉じ込められた」と分かった時は『誰が』コレを仕組んだのかは、そこで何となく察しがついた。


 ――でもまさか、あの子も……だったとは思わなかったけど。


 いや、もしかしたらグループの中心の子に言われて「仕方なく」という可能性も否定は出来ない。


 ――ただ本当に「好きだ」というのであれば自分から……と思うところだけど、でも「照れ」とか「恥ずかしい」という感情が先に来てしまうのだろうけど。


 当時の私はボーッと空を見上げてただただ時間が過ぎるのを待っていた。でも、そんな私を助けてくれたのは……。


「香里ちゃん!」


 ――有紀人だった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 時間としてはそこまで長く閉じ込められていたワケじゃなかったけれど、事情が事情だっただけに後日、クラスメイトたちは先生たちに呼び出されてお説教を受けていた。


 私としては「どうして分かったんだろう?」と思って有紀人に聞いた。


 なぜなら、こういった「委員会」がある時はいつも先に帰っていたから、普通であれば気がつかないはずだったからだ。


 ――でも、結局のところ「何となく」としか答えてくれなかったのよね。


 そして、私も何となく「これ以上聞いても教えてくれそうにない」と思い、有紀人も話題を変えて何気ない話をしていたのだけど……。


「香里ちゃん。これからもずっと僕と仲良くしてくれる?」


 なぜか有紀人は急に立ち止まってそう私に尋ねた――。

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