第42話







 








          白い世界だった
















          何も無い

「なに……ここ」

 ただ白が広がっていた。

 広漠とした、虚無だった。

 虚無でいて空虚だった。

「空氣はあるみたいだな、歩こう」

 歩いても、歩いても、何もなかった。

 どこを歩いているのか。

 どのくらい歩いているのか。

 ここには何があるのだろうか?

 何も無いのだろうか。

 ヘレルはいったいどこに居るのだろうか。

空間がひび割れる。

 パリンっと音を立てて割れたあと、ヘレルがドサリと倒れこんた。

 血だらけのヘレルはピクリとも動かない。









 さすがに分裂してしまったから、勝てはしないか……

 こんなにも自分の親が強いとは思わなかった。

 そうか、それも当然か、俺の親だ、強いに決まっている。

 あれで本当は死んでいたはずなんだ。

 ああ、生きているんだ。

 俺は、虫の息で死に損ないだがまだ存在しているぞ。

 彼女のおかげで……ありがとう。



  




 グッと手を握った。

 寝返りをうって見上げた空は黒。

「ハア、ハア、まだ死んでたまるか」

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