第39話
買い出しから帰ってきた熊谷は一緒になって話を聞いている。
「つまり、早いとこ別れた自分を見つけに行きたいけど、供物がささみだったから、それに比例して魔力がほとんど無い状態になってしまったと、それで本来の魔力を無くて探しに行けないから強力して欲しいってことか」
萌「つまりおじさんのせい」
ヘレル「そうかもしれない」
信也「いや、こんなことになるとか思わないでしょ」
萌「おじさん、やっぱりあれを供物に使えばよかったんだよ」
信也はしかめ面をした。
信也「いや、あれは……ちょっと」
ヘレル「あれとはなに?」
萌「まってて」
と言って萌はカウンターの中に入って自分の鞄をとってきた。
鞄に手を入れて、瓶をとりだす。
とん!と机の上にそれをのせる。
信也は手を目において視界をふさいだ。
ヘレル「な……なにこれ」
中にはなにか白い小さいものが無数に重なって瓶に詰まっている。
萌「ダンゴムシだよ」
萌はニタリと笑顔になる。
ヘレル「何を言っているのかわからないんだけど」
萌「ダンゴムシの死骸」
なんと瓶の中にはダンゴムシが息絶えて白くなったものが詰まっていたのであった。
ヘレルは絶句してしまう。
信也「しまってきなさい」
萌「えー」
萌は渋々したがった。
萌は家の近所のダンゴムシを集めて瓶に入れていたのである。
家の近所のダンゴムシが見かけられなくなったらしい。
ヘレル「楽しいのそれ?」
萌「しぬほどにたのしいよ」
ヘレル「くるってるな」
くくくと少年は笑う。
「あたしは好きなことを好きなように好きなだけやっているの」
ヘレルはじっと萌を見たあと、楽しそうに笑顔を見せた。
信也「それで、別れた自分ってのはどこにいるのかわかるのかな?」
ヘレル「とりあえず、この世界にいないことはたしかだね」
萌はカウンターからヒョッコリ頭を出す。
萌「ええ。じゃあどうやって探すの……」
信也「違う世界か……俺に心当たりがある」
信也「萌、ついでに紙を持ってきてちょうだい」
萌「はーい」
萌がとってきた紙を受けとると、信也は人さし指を立てて、紙に向かって指を動かす、その動きにしたがって、ジ、ジ、ジ、ジと音をたてながら、煙をあげて文字が焦げ跡をつけて綴られていく。
書き終わり、飛行機の形に折って、ピーピカピピララなどど言ってまじないをかけた。
信也は窓を開けてスッと飛行機を飛ばすと、待っていたかのように風がピュンッと吹いて飛行機を空高く運んでいった。
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