第37話

「あなたなの?」

 萌は氷の像を見て言う。


 お願いだ、もうあそこには戻りたくない


「おじさん……」

 萌が信也を助けてあげてと訴えるように見ている。

 信也は後頭部をボリボリと掻くと、それに近づいていく。

 手を伸ばす。

「彼の者の戒めを解き放ち、我の前に真の姿示せ」

 少年は全身を濡らしてたたずんでいた。

 そして、ありがとうと言った。

 萌の目には少年が目から涙をこぼしているように見えた。

 信也は風の魔法で少年の体を乾かしてあげた後、ボン!と音を立てて煙りと共に出した毛布を手に掴む。

 少年は毛布を受け取り肩にかけた。

「僕を召喚した者はそこの君かな」

 少年はまっすぐに萌を見る。

「あたしは萌」

 少年は萌に近づいて跪く。

 地面についた拳を震える程に握りこんでいた。

「召喚者よ、なにとぞ力をお貸し願えないだろうか、本来は召喚された方が力を貸すのだろうが、今の状態では僕にたいしたことはできそうにない、もし力を取り戻した暁には、なんでも願いごとを一つ叶えてみせる。もう一人の僕を探し出すのを手伝って欲しい」

 信也が口をはさむ。

「まてまてまて。なんだそれは!?召喚された側に力を貸すってどういうことだよ」

 少年は信也に目を移す。

「僕は今、力の大半を失っているんだ」

「いいよ、あたしでよかったら力になってあげる」

 信也は、顔に手を当てた。

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