第36話
「おじさん、描けたよ」
萌はチョークで地面に円や三角やらの図形や、牛やネズミ、ウサギなど十二の動物の絵や数字、季節、月日、なにかわからない文字などを綴っていた。
「よし、じゃあこいつを真ん中に置いて呪文を唱えてみよう」
信也が鶏のささみを手渡すと、萌が先ほど描き終わった魔法陣の中央に据える。
陣からでて詠唱を唱えだす。
「告げる、汝の身は我が元に、代償をもって我に守護を与えよ 」(供物がささみだからなあ、何が出てくるんだろう。くぷぷぷぷ)
と信也は顔にはださないが、面白がりながら眺めていた。
訓練の一環として、虫以外も召喚できるようにと思い、教えている最中だった。
基本的には自分の相性と合う魔法以外は効率が悪いので使うことはあまり無いのだが、勉強である。
来るか。
地下室が一氣に冷え切った。細氷が室内に広がり電球の光が反射してキラキラと輝き、美しい少年を模った氷の像が出現した。
信也は目を見張る。
(なんだ……鶏のささみで、こんなのが出てくるはずが)
今使っている魔法陣で呼び出せるということは、明らかに魔力を持っている存在なのは間違いない、通常なら魔力を持った動物やら大きくはない魔物か精霊が来るはずだったのだが……
人間の姿形をしているということは、明らかに魔力を持った上位の存在であった。
萌は寒い、寒いと言いながら腕を擦っている。
「なんかよくわからないのがでてきたから元に返そうか」
信也がそう言って萌に近づくと、
待ってくれ……
戻さないでくれ
萌と信也の頭の中で声が聞こえた。
「なんだ!?」
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