第34話

(おい、もう一人の僕)


(ふ、なんだ。今取り込み中だが、何かしたのかおまえ)


(おまえのせいで彼女が死んだよ)


(……………………そうか)


(いいか、彼女の願いだ、絶対に死ぬなよ)


(死ぬつもりなんてさらさらないぜ)





 ヘレルは少し戻った力で胸に刺さった槍を力尽くで引っこ抜き、次元の割れ目を作って別の世界へと逃げた。

ヘレルは彼女を埋葬すると、墓の前にポツンとたたずんでいた。

 双眸に光は無く表情もない。

 石にはなっていないが石のようになって動かずに。

雨が体を濡らしても。

 朝が来て夜になり、また朝になり夜になる。

「ヘレル様……」

 付き人の声もとどいていない。

 

 

 

 いつのまにかヘレルは父の前にいた。

 ヘレルの目に光がふっと戻って父を見る。

「我が息子よ、人の女に心を奪われる禁忌を犯した罪は重い、別れたもう一人のおまえの罪はもっと重い。お前を投獄することにする、二度とこんなことが無きように」

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