第33話

どうしたの。

 どうしたの。

 どうしたの。

 どうしたの。

「最後の曲にするわ、ヘレルに私の命をあげます」

 えー。

 えー。

えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

 えー。

「バカ! 何を言ってるんだよ。やめてくれ! 誰が喜ぶんだそんなこと、僕は喜ばないぞ!」

「お願いヘレル、もう私が長くないこと知ってるでしょ、だったらあなたの命になってあなたと共に生きたいわ……私のこと好きなんでしょ、だったらわがままを聞いて」

 ギュッと少年を抱きしめる。

彼の体の温かさがなんと愛おしいんだろうか。

 ヘレルは黙って涙を流していた。

「もし、生まれ変わったら、また一緒にいてあげる、だから死んじゃだめよ」

 私は立ち上がってピアノの鍵盤蓋を開けた。

 リスト作曲 愛の夢

 あなたはただ一緒にいてくれただけだけど。

 ピアノを聞いてくれた。

 一緒にご飯を食べてくれた。

 お話をしてくれた。

 何でもないことだけど私は嬉しかった。

 あなたがいてくれてよかった。

 きっと私たちは出会うべくして出会ったんだってそう思える。

 たとえもう会えなくなっても、弾いた曲が、私の記憶があなたの心の中に生き続けるの。

 私の分まで生きてヘレル。




 彼女は体から力が無くなったように鍵盤に埋もれた。

 部屋に高音と低音が響く。

 僕は立ち上がり彼女を抱きすくめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る