第28話

必死に掴まれた首から手を外そうとするが無駄だった。

 きりきりと首を締め付けられていく。

 だんだん……意識が……なくなって……

腕がぶらりと垂れ下がる。

 悔し涙をこぼしてヘレルの意識は途絶えた。

 すっと白く長いものが黒いヘレルの腕に噛みついた。

 夜刀の頭だ。

 掴んでいたヘレルを離す。

 それと同時に熊男のオトソが背後から脇の下に腕を入れて取り押さえる。

 その間に鷲頭の大鶚が氣を失っているヘレルを遠くに離して、バティンが傷を癒やす魔法をかけていた。

 いつの間にかヘレルの七人の付き人がいる。

 黒いヘレルは憤怒の表情を面にだした。

「貴様らそこへなおれえ! 己の仕える者を忘れたとは言わせぬぞ!」

 その声は大氣を震わせた。

 電流が流れたようにオトソ、夜刀、はヘレルを離して回復魔法をかけていたバティン以外はその場にひれ伏す。

 黒いヘレルの腕の傷は瞬時に治っていた。

「俺の弱さと分離できて清々したぞ! 自分を殺すということはさすがにせぬがな。俺には行かねばならぬ所がある。貴様ら、その弱き俺をいつもいる場所にでも運んでおけ、どうせそいつはそれがお望みだろう!」

黒い翼を広げてヘレルは闇の中に消え去った。

「なんということだ……」

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