第26話

彼女が泣いていたから、泣いて欲しくなかったからやったことでよけい泣かせてしまった。

(だれが泣かせた)

何がいけなかったのだろうか(おまえがいけないんだ)

 わからない(わかるだろ)

 彼女がわからない。

 人間がわからない。

 こんなに見てきてもわからないのか(いやわかるはずだ)

 なぜこんなにも彼女を思ってしまうのだろうか(なぜだ)

 ピアノを弾いてくれるから?

 俺を落ち着かせてくれるから?

 俺が彼女を必要としてるから?

 好きとはこういうことなのだろうか(好きなのか?)

 理屈じゃない。

 理由なんてない。

 ただ好きだ。

 これが他のもののために悩んでいるということなのか(苦しいだろ)

 俺はどうしたらよい? (さあな)

 彼女に嫌われたくなかった(俺は好きなのに)

 ぐっと胸が苦しくなった。

自分というものが嫌になった。

「くそいまいましいしい!」

胸を押さえながらヘレルはうめき声を上げる。

 ヘレルの感情がかき乱されて体の中の毒がまたうずき始める。

 またヘレルの形(ぎよう)がまがまがしい姿に変わっていく。

 ヘレルの感情と今まで見てきた人々の感情がぐるぐると混ざり合い溶けていく。

(でていけえええええええええええええええええええええええええええ)

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