第25話

出かけた日とは違う日の話だけど……

 お墓参りに来ていた、ヘレルも一緒に。

 花を生けてあげて、お供え物のお菓子を置いて、お線香を立てて、黒い墓石に水をかけて、手を合わせる。

「誰の墓だ」

「私の大切な人、私が殺したのよ」

 私の目からは涙が溢れんばかりにたまっていた。

 こうやってお墓の前に立つと、あの人を失った頃の氣持ちが甦ってくる。

 あの人を思い出す。

 忘れてはいけない人を。

「そなたの涙は見たくない」

 ヘレルは腕を伸ばす、手から何やら衝撃波を放って目の前のお墓を粉々に吹き飛ばした。

 私は目を見開いて口を開けていた。

「な、なにしてるのよ!」

 私は取り乱してヘレルに詰め寄る。

「早く元通りにして!」

 と泣きわめく。

「あなたのそういう、無神経なところが嫌いなのよ! ふざけんじゃないわよ、いつも自分勝手で人の氣持ちを少しは考えなさいよ、あんたのおもちゃじゃないのよ私は! 死んだ人のお墓を壊すなんて、どんだけ頭おかしいのよ!」

 ヘレルはじっと私の言葉を聞いた後、うつむきながらお墓を元通りに戻した。

 そしてどこかに行った。

 私はその場でうずくまりしゃくりあげながら咳き込んでいた。

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