第20話

飛んだ、どこまでも。

 森を越え、山を越え、町を越え、平原を越え、海を越え。

行き場の無いエネルギーがヘレルの体を犯していた。

自分の感情をコントロールできなくなっていた。

 突然くる、暴れだしたくなる衝動を抑えることができなくなっていた。

 海に潜り底まで到達したヘレルはさらに地中を突き進んだ。

 海底火山が噴火、海水はぶくぶくと高温になり凄まじい勢いで氣化して爆発を起こした。

 海面では白と黒の煙が噴き上がり対照的な二色が織り混ざる、黒の中に白、白の中に黒、海から出てくる煙は止まることをしらず、水しぶきが上がり水蒸氣と共に海底から上がってきたマグマと水の塊が水面に叩きつけられる、マグマ水蒸氣爆発だ。

ヘレルは海から飛び出すと、天高く舞い上がる。

 すると、雲が寄り集まり嵐が吹き荒れた。

 嵐の中心にヘレルはいた。

 激しい雨が降り、風は叩きつけるように、雷は悲鳴のようだった。

「あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁぁあぁあぁあぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!!!!!!」

いつの間にかヘレルを取り巻くように七人の付き人がいる。

「ヘレル様! 御静まり下さい」

ヘレルの耳には何も聞こえていない。

「致し方ない」

 七人は呪文を唱え始める。

 魔法の鎖が七つの方角からヘレルに迫り、ヘレルを束縛した。

 嵐は三日間おさまらずに四日目になってやっと雨は勢いを弱くする。

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