第16話

我が子を失ってしまった。



 もう嫌だ


 死にたい……


 目の前に影が寄り集まって人の形(ぎよう)を成した。

「あなたは……」

「女よなにを望む……」

魔女は目の前にいる者が人ならざる者だと悟った。

「殺して下さい。息子を失い、人を殺めてしまいました。私はもう生きていたくありません」

「そうか」

ヘレルが女の目に手を被せるとパタリと女は息をひきとった。

「アパオシャよ、なぜ人間だけではない、この世界の生き物は自分以外の生き物を想って苦しんでおるのだ」

ヘレルのそばに跪いている黒い馬男は言った。

「私もわかりませんが、きっと好きなんでしょう苦しむということは、大切に思っているのではないのでしょうか」

「好きとは……なんだ」

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