第15話
「追うぞ!」
四人いた兵士は半分を残してダートと隊長が逃げた二人を追いかけた。
逃げる者たちは追いかける者たちからどんどんと離れていく。
「ええい! くそ!」
甲冑が重くて早く走れない兵士二人だったが、甲冑を脱いで急いだ。逃げた二人が追いつかれるのは時間の問題だった。
(あんな子供や女性を追いかけ回さないといけないなんて……俺は何をやっているんだ)
「きゃっ!」
魔女は転んだ。
「お母さん!」
女の衣服は土で黒く汚れてしまった。
「お母さん、僕が足止めするからその間に逃げて!」
「タルフィ! だめよ!」
くるりとこちらを向いた目の前の少年の手から炎の塊が飛んできた。
な……なんだこれは……これが魔女の力!?
炎の塊に直撃した隊長は全身を紅蓮につつまれて苦しみを叫びのたうつ。
ダートはこの光景を見て手が震えた。
「……ば……ばけものだ……」
あんな力を持った者を野放しにしてはおけない。
やらなければ、やられる。
「うおおおおお」
剣を振り上げ向かっていく。
青年兵は少年の首を剣で貫いた。
恐怖と興奮が綯(な)い交ぜになった瞳と母親を守ろうと強い意志のこもった瞳が交錯する。
倒れた少年は、血を吐きながら声にならない声でお母さんと言いながら絶命した。
「いやあああああああああああああ」
子供の母親の悲鳴を青年は聞いているようで聞いていなかった。
自分の汚れた手と赤にまみれた少年を眺めて立ち尽くしていた。
人を殺してしまった。
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