第12話

ヘレルは都から遠く離れた小高い丘の上で、ヴェトイが焼かれているのを腕組みして眺めていた。

「オトソよ俺はこんなくだらぬ奴らを見るのをやっていかねばならぬのか」

「御意にござります」

 オトソはその大きく黒い体を折り曲げて跪いている。

 ヘレルは自分の目から涙が流れているのに氣づいていない。

 












森には魔女がいた。

 村から少し離れたところに、家族三人でひっそりと暮らしている。

 村の人々は魔女という認識ではなく、病氣によく効く薬をくれる人、なくした物を探すために占ってくれる人というふうに魔女のことを認識していた。

 ぐつぐつぐつ。

 大きな釜の中にある、紫色のドロリとした流体を大きなへらでかき回している女がいる。

 家の扉が開く。

「うわ、くっせ。お母さんなんか食べるのないの?」

 魔女の息子のタルフィはお腹が空いていたようだ。

「はいはい」

 魔女は指をピっと動かすと、戸棚の扉がひとりでに開きリンゴがふわりと宙を飛ぶ。

 受け取ったタルフィはありがとうと言って扉を閉めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る