第10話

 廻りの人達は面白がり、小石を入れた。

「あぶらかたぶら、ちちんちんちん、ちんぷいぷい!」

 呪文を唱え終わるや、袋を広げると、二十匹のネズミが飛び出す。

「うわああ」

 まわりにいた観衆の人々は、目を合わせて仰天する。

 ヴェトイは高笑いをして帰っていった。

袋は二重になっていた。片方が空になって、もう一方にはネズミが入っていたのを誰にも氣づかれずに、成功させたのである。

この演技は予期せぬ結果をもたらした。

 人々を喜ばせるためにやったのに、人々は怯え、地獄の仕業だと信じ込み、ヴェトイを魔法使いだと言う者が増えていったのであった。



 夜。

 ドンドンドン!

 戸が叩かれる。

「なんだ」

 ヴェトイが戸を開けると村では見かけない男たちが十人ほどいた。

一人は祭服を着た人物で他は武装した者。

「なんだ、こんな夜更けに人の家を訪ねてきて」

「おまえがヴェトイか、お前が魔法使いだという噂が流れている。来てもらおうか」

 ヴェトイは渋々逮捕されて連行された。

 この時期、魔女狩りが盛んに行われている。

 その影響で、猫が魔女の手先と見なされていたために、猫は処分されネズミが大量に増える事態が各地で発生していたのである。

 魔女狩りに巻き込まれるヴェトイも運が無かった。

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