第2話

その赤子は彼の頭から生まれた。

「なんと、産みの苦しいことか……だが、この苦しみを乗り越えた先に待っている喜びはなんと、良いものだろうか」

赤子の産声が広間に広がっていた。

 赤子は、生まれた姿のまま床に。

 手足を縮こませながら呼吸をしている。

 彼は金色の玉座から立ち上がり、赤子にゆっくりと近づくと両の手で赤子を頭上まで抱え上げた。

「おまえの名は、ヘレル・ベン・シャハル! 私の子だ! ヘレルよ!」

 赤子はひときわ大きく泣くと、その眼(まなこ)をカッと見開いた。

 その瞳は宇宙と、そして星々がそこにあるかのように深く見たものをとらえた。

 ピュンッと、風を切り裂く音。

彼の首は、ぱっくりと掻き切られている。

 赤子が親の首を切ったのだ、何かの力で。

 彼は首を切られた状態で静止して、赤子も抱え上げられたまま泣き声をだすのをやめ、ただじっと首から流れ出る血液を凝視していた。

 切り裂かれた首は、泡を吹いて、みるみると元通りになっていく。

「馬鹿野郎! 赤ん坊! 親を殺そうとするとはなにごとか!」

 彼は抱え上げていた腕を力のあらん限り下に振り下ろす。

 赤子は地面に叩きつけられた。

 ペチン!肌が床についた音がする。

マントを翻して背を向けた。

 彼は憤慨してその場を去る。

 ヘレルは何ごともなかったかの様に、広間をはいはいしながら楽しそうに笑っていた。

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