第3話男の中の男

朝8時、美樹は目を覚ました。

ベッドから降りて、リビングにいくとおじいさんがテレビを見ていた。


あ、あのおじいさん神様だった。夢じゃないんだ。良かった。


「おはようございます。神様」

「お、やっと目覚めたか?おはよう」

神様は右手に缶ビールを握っていた。

「あ、神様、今日はわたしに男性を紹介して頂けるんですよね?」

「もちろんじゃ」

「うわっ、酒くせ~」

「私が今日紹介するのは、男の中の男よ!」

「うわ~楽しみ」

「今日はその男とバーベキューじゃ。金は渡してあるから、準備はその男がする」

「わーい、バーベキューで手際がいい男性憧れてるな~」

「だろ、だろ。今日は美樹は私の孫と言うことで」

「えっ、神様も付いて行くの?」

「もちろん。いい雰囲気になったら、消えるからさ」

「あ、ありがとうございます。神様」


2人は電車とバスを乗り継いで、キャンプ場に向かった。


キャンプ場は土曜日なので、混雑していた。

「神様、、、」

「こらっ、今日はおじいちゃんだ。神様と言っちゃいかん」

「は、はい。おじいちゃん。もしかして、男の中の男の方って、上半身ムキムキのあのイケメン?」

「どれどれ?」

神様、否、おじいちゃんはオペラグラスで男を探した。

「違う違う、あんな若造ではない。チャラい男だぜ。そうだ、隣の男が君に紹介する男だ!」

2人はその男に近付いた。

「こんにちは、田淵君」

「あ、市川さん。こんにちは」


ど、どこが男の中の男だ!ゴリラじゃないか!


「この子が孫の美樹じゃ」

「は、初めまして市川美樹です」

と、挨拶すると田淵が、

「初めまして、田淵鉄男です。ヨロシク」

田淵は右手を差し出した。美樹は恐る恐る握手した。

腕の剛毛が気になった。Tシャツから胸毛が飛び出ている。

田淵は手際よく肉を焼いていた。

「お二人とも、もう食べられますよ」

「じゃ、3人で乾杯じゃ」


かんぱ~い


「鉄男はな、現役の消防士なんじゃ。歳はいくつだっけ?」

「市川さんこれで、5度目ですよ。僕はまだ47歳です」


ない!このゴリラとはない!


「美樹、ちょうどいいじゃねぇか」

「よして下さいよ市川さん。美樹さんも困ってますよ、エヘヘ」


ええい!酔ったモン勝ち。もう、濃いめのハイボール飲んじゃお。


美樹はグラスにウイスキートリスを半分くらい入れて、炭酸水で割りハイボールを作って、一杯目を一気飲みした。

「美樹さん、お酒強いんですね」

「いえいえ、まだ、おじいちゃんより格下です」

「鉄男はまだビールでいいかい?」

「はい」

「私もトリス飲もっと。美樹、トリスはロックが一番じゃ」

3人は散々飲みまくった。

すると、夕方。


「パーパー!」

鉄男は振り向いた。

「お~、裕太。裕太も食べるか?」

「うん」


美樹は状況を把握出来ない。おじいちゃんはおろおろしている。

「こんばんは、田淵の妻の景子です。今日はありがとうございます」

「景子も来た事だし、仕切り直し」


かんぱ~い!


美樹は神様の二の腕をつまんだ。

「いててて、辞めろ美樹!」

「このインチキ神様!」

バーベキューは20時まで続いた。

美樹はある意味ホッとした。

しかし、このインチキ神様をどうにかせねば!

頭を抱える美樹を尻目に、神様はイビキをかいて寝ていたのであった。

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