第7話
とにかく花を捕まえよう、ということになった。
正直な所は駆除したいところだが、同行者組み、特にCが反対したのだ。
(ふぅん??)
船員と商会の間で交わされた契約内容を、Cはちらつかせた。
そんなことをされたら、黙るほか無かった。
牽制のために、ジェシー達にもそれを言ってくる。
ジェシー達は、表向きは神妙な顔をする。
その内心は、
(あぁ、はいはい。
そういう会社なのね。
あれほど取り乱していたのに、切り替えの早いこと)
と呆れていた。
さっさと終わらせて帰る。
それだけだ。
もっとヤベぇこと――人に寄生して、捕食する系の植物をこっそり持ち帰る――をしてる自覚が、ジェシーには薄いのである。
ひとまず、このまま食堂を活動拠点として動くこととなった。
「問題は【花】の位置ですね。
そして、どうやって捕まえるのか、です。
位置については、【マップ探査】と【鑑定】スキルでなんとかわかりそうですが。
この中で、それらのスキル持ちの方はいますか??」
ハルが訊ねる。
すると船長が、
「ブリッジで確認できるかもしれない。
捕獲もできるだろう」
こう言ってきた。
曰く、この船は万が一、億が一にも賊の侵入を許した時のための機能が備わっているらしい。
船内でも、賊を無力化させる程度の攻撃が可能なのである。
「……凄いですね。さすが最新式だ」
言いつつ、ジェシーは同行者達、とりわけCをそれとなく見た。
(船の機能を知らないわけじゃなかっただろうに。
死人が出たにも関わらず、むしろそのドタバタを利用して船長にすぐ報告させなかったのは、内々で済ませるつもりだったのか??
それとも……)
内心で疑問を呟きつつ、同時に船長にも別の疑問をぶつけた。
「でも、そんな機能があるのなら、【花】の起こしたトラブルをすぐに感知、把握出来たのでは?
船長達は、事態の報告を受けてこちらまで来ましたよね?
出来なかったんですか?」
船長はそのことについても説明する。
要約すると、その機能は賊、もっと言えば人間の侵入に対して効果を発揮するよう設定されている。
だから植物は対象外だったのだ。
「それならブリッジで、【花】の位置を確認するのは難しいのでは?」
「かもしれない。
しかし、物は試しだ」
ダメ元というやつである。
たしかに、やらないよりはいいかもしれない。
話し合った結果、船長と副船長がブリッジへ。
航海士が、【花】の捕獲のため捜索に加わった。
それは、船長命令でもあった。
まず、船長達がブリッジへ行き、対賊用の機能を調整し使えるかどうか調べる。
その結果を受けて、捜索隊が動くこととなった。
念の為、ブリッジまでジェシーが船長達を護衛した。
とくに何事もなく、護衛を終えるとジェシーは食堂へ戻ってきた。
捜索隊の内訳だが、ジェシー、ハル、B、C、D、航海士、砲撃手の七人である。
船医と料理人は食堂で待機となった。
連絡が来るのを待つ間、ジェシーと砲撃手が簡単な武器を制作した。
武器と言っても、本当に簡単なものだ。
調理の時に使うめん棒。
そこの片側の先端に術式を施し、微弱な電撃を起こせるようにしたのだ。
料理人の許可はとってある。
とは言うものの、さすがに全部は使えないし、作れないので二つだけだが。
砲撃手がお手製武器について説明する。
とはいえ、それも短いものだった。
「無いよりはいいだろう。
使い方は、術式を刻んだのとは反対の方を持って、魔力を流す、これだけだ。
先端には触るなよ。
微弱って言っても、人ですら気絶する程度の威力がある」
言いつつ、手近な壁にめん棒を触れさせた。
瞬間、バチバチィィイイっと火花が散る。
班わけについてだが、ジェシー、D、航海士、砲撃手で一つの班。
そして、ハル、B、Cで一つの班となった。
ジェシーは、班が決まるなりこうハルへ耳打ちした。
「Cに気をつけろ。
分かってると思うが、アイツは怪しい」
ハルは小さく顎を引いた。
船長が用意した手袋を、ジェシーとハル以外のメンバーが装着する。
それから、ジェシーは料理人に頼み込んで厨房に入る。
目的の物を見つけると、譲ってもらった。
準備は万端である。
今か今かと船長からの連絡を待つ。
なんとも言えない、嫌な時間が過ぎる。
もしかしたら、ブリッジが襲われたのでは?
だから、連絡が来ないのでは??
そんな不安が募りつつあった。
その時だ、船長から通信魔法で連絡が入った。
――感知が出来た。今、目標は貨物室のa区画にいるようだ――
貨物室はa~fの区画に分かれている。
その中の一つ、a区画から【花】の反応があったということだ。
「了解、これから向かう」
班を二つに分けたのは、【花】の居場所が分からなかった時の為だったが、どうやらその必要は無かったらしい。
捜索隊全員で、貨物室へ向かうこととなった。
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