第4話
光の玉を魔法で生み出し、それを操作しつつ洞窟の奥に進む。
ちなみに、ジェシー一人だ。
ハルは入り口で待っている。
同行者達から万が一にも連絡があった時のためだ。
光の玉が照らしだしたのは、異様な光景だった。
どこにでもある洞窟。
その壁肌に、植物が根を張っていたのだ。
それは壁伝いに、奥へ奥へと続いている。
その根を追いかけるように、ジェシーは進んでいく。
ハルからの連絡は、通信魔法で来ることになっているので声が届くか否かの心配はしていない。
やがて、ジェシーは洞窟の最奥へとたどり着いた。
光の玉を操作し、上へ移動させ全体を照らし出す。
「!?」
照らし出された光景に、ジェシーは目を剥いた。
というのも、そこにはポタポタと水滴が滴り落ち、水溜まりを作っていたのだが。
彼が驚いたのは、そこに首を突っ込み横たわっている死体のせいだった。
もう骨だけとなり、辛うじて残っていたボロボロの衣服を纏っている。
それだけでは無い、その水溜まりへあの根は続いていたのだ。
「……これは」
慎重に、ジェシーは死体へと近づいた。
死体にも根が少しだけ絡まっている。
死体の足を掴んで、水溜まりから引き上げてみた。
ブチブチと、死体に絡まっていた根が切れた。
引き上げた死体には首が無かった。
水溜まりに近づいて覗き込んでみる。
頭蓋骨が落ちていた。
「商会の被害者達とおなじ、か」
しかし、花はここには無かった。
生えていたのは、入り口近くである。
ここまで通ってきた場所にも生えていなかった。
「やっぱり、植物ってことだよなぁ」
ジェシーは考えを巡らせる。
この洞窟の入り口には、あの花しか生えていなかった。
洞窟から一歩外に出れば、木や雑草が鬱蒼と生い茂ってはいる。
しかし、洞窟内に生えていたのはあの花だった。
「この根が、あの花の根っこってことでいいのか??」
鑑定が使えないので、なんとも言えない。
下から二番目の弟なら鑑定もちだから、もしここに居たのなら花や根、そしてこの死体について鑑定してくれただろう。
しかし、それは今のジェシーには無い物ねだりだった
「戻るか」
花は手に入れている。
この花についてなにか分かれば、と思ったがこれ以上は無理のようだ。
ジェシーは来た道を引き返した。
そこからは、散策しつつ海へ戻る。
コンパスが無くても、なんとか戻れた。
念の為に木にそれとなく目印の傷をつけておいて正解だった。
まだ同行者達の姿は無かった。
「それにしても怪しすぎますよねぇ。
彼らは、なんであそこで別行動なんて取ったんですかね?」
ハルが疑問を口にした。
ジェシーは答える。
「そりゃアレだろ。
部外者に見せたくないもの、あるいは見せたくない事があるんだろ」
「じゃあ、それって何なんですか??」
「さてね。
案外この島をリゾート地にするって話だから、その計画のための下見だったりするかもな」
「えぇ、それじゃ普通すぎません??」
そんな雑談をしばし交わした後。
不意にジェシーは真面目な顔になった。
「とにかく、だ。
帰路の中で異変が起こったって話だから、気を抜かないようにな、ハル」
「わかってますよ」
そんな会話を交わした直後、同行者達が現れた。
各々が花を入れた袋以外に、なにやら皮袋を手にしていた。
「いやぁ、大量大量」
同行者達は上機嫌に、そして口々に事情を説明してきた。
なんでも、ここには珍しい鉱物が取れる場所があるらしい。
しかし、社外秘のためジェシー達を連れていくことが出来なかったらしいのだ。
また、そのことを話すのも帰るこのタイミングでなければならないと、指示を受けていたらしい。
話す話さないは、彼らに任されていたのだとか。
説明をしつつ、取れた鉱物を見せてきた。
アダマンタイトとオリハルコンが入っていた。
「さすがに何も話さないのは罪悪感があってね」
ほんとかよ、とジェシーとハルは思ったが口にはしなかった。
ここで仲違いを起こしても、なにもいいことは無いからだ。
それから人数を確認し、彼らはボートに乗って船へと戻ったのだった。
今日は停泊したまま一泊する予定だった。
船に戻ると、ジェシーとハルは行きと同じで自由行動となった。
ちなみに一泊するのは、ほかの港に寄る関係もあるらしい。
船に戻るとすぐに、ジェシーとハルは手袋を外しよく洗い流した。
手洗いも念入りにする。
着ていた衣服も、生活魔法で清めた。
「水魔法と生活魔法あるとほんと便利だよなぁ」
「わかります。
本当に覚えてて良かったと思いますよ。
水魔法と生活魔法」
その後は、夕食までジェシーは自分の部屋で一休みすることにした。
ハルは、船の中の散策に出かけた。
その途中で、貨物室に向かうAを見かけ、声を掛けた。
雑談を交わす。
どうやらAには仕事があるらしい。
これからCと合流し、貨物室に行くのだと話した。
ハルはそこに立ち入れないので、着いていくことはなかった。
仮に行けたとしても、興味はそれほどでもなかっただろうと思われる。
そんなこんなで時間を潰し、気づいたら夕食の時間となっていた。
昼寝をしていたジェシーを呼びに行き、一緒に食堂へ向かう。
夕食は、楽しいものとなった。
そして、翌日のことだ。
翌日の、朝食の席でそれは起こったのだった。
同行者は全部で五人。
仮にこの5人を、A、B、C、D、Eとする。
A、B、C、が男性。
D、Eが女性である。
異変が起きたのは、Aだった。
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