第11話 初戦闘

リザードマンはこちらを睨み付けるとじりじりと近づいてくる。あきらかに敵意むき出しで、話し合いにはならないようだ。


「信長、龍平、前に出て敵を威嚇して近づけさせるな! 天野さん、花京院さん、右のモンスターから倒すよ、狙いを定めて一斉に攻撃しよう」


とっさに男子二人を下の名前で呼び捨てにしたが、二人ともまったく気にしていないようだ。指示通りに前に出てバットを構えてモンスターの襲撃に備える。天野さんはやはりモンスターに恐怖を感じているようで、震えて上手くスリングショットを構えられない。しかし、花京院さんは動じることなく、静かに弓を弾いて狙いを定めていた。


リザードマンは槍を高く構えると、飛び込むようにこちらに向かってきた。信長と龍平はバットでそれを迎撃しようとする。しかし、パワーの違いか、バットがリザードマンの頭部や胴体に命中しても、逆に弾き飛ばされた。


リザードマンが、そのまま倒れた二人に襲い掛かろうとする。すぐに持っていたスリングショットでリザードマンを狙うが、放つ前に風を切るような音がした。見ると、矢がリザードマンの頭を見事に射抜いていた。頭を撃ち抜かれたリザードマンはそのままゆっくりと前のめりに倒れた。


花京院さんはすぐに二射目の準備をする。残ったもう一体のリザードマンは、仲間をやられて怯んだが、仲間の仇とばかりに怒りの声をあげて、倒れた二人に槍を突き刺そうとした。


そんなリザードマンに俺と天野さんのスリングショットが命中する。スリングショットは収縮性の良いシリコンゴムを使用しており、玉は鉛製で、かなりの威力がある。鉛はリザードマンの固そうな皮膚に食い込み、高い声で悲鳴をあげた。


その隙に立ち上がった龍平と信長が、バットでリザードマンに打撃を与える。しかし、どの攻撃を致命傷を与えることはできてないようだ。痛がりはするが、倒れるそぶりはなかった。


しかし、その時、我がPTの最大火力がもう一度、放たれる。槍を振りかぶったリザードマンの頭部に、リプレイを見ているようにさっきと同じように矢が突き刺ささった。やはり頭部が破壊されると耐えることはできないようで、リザードマンは後ろに飛ばされるように倒れていった。


「やったか……」

「さすがは花京院さん、百発百中ですね」

「この距離でしたら、動いていてもはずさないかもしれません」


この距離と言っても15mくらいは離れていた。それを確実に撃ち抜くのは凄技と言っても言い過ぎじゃないと思う。


「これって食べれねえかな」

リザードマンの死体を見つめながら龍平が怖いことを言う。確かにトカゲに見えなくもないし、食べれないこともないだろうが、これを食料だと持って帰ったらパニックになるだろう。最終的に背に腹腹は代えられないかもしれないけど、今はその時ではない。


「今はやめとこう」


俺のその一言で、みんな意図を察したのかそれ以上、リザードマンを食べようとは提案しなかった。


「それより、早く奥に行きましょう。まだ、水すら見つけていませんし、収穫のないまま帰るわけにはいけませんものね」


花京院さんのもっともな意見だけど、俺はそれを否定した。


「いや、今日は一度校舎にもどりましょう」

「そうですの?」

「えっ!? いいのかよ。運動部選抜に出す抜かれるぜ」

「完全に俺の責任なんですが、戦闘面で大きな想定ミスがありました」

「なんでだ? 圧勝だったじゃねえか」

「いえ、このままではいつか信長くんか龍平くん、または二人とも死んでしまいます。一度、装備の改善の為戻るのが得策です」


「なるほどな、まあ、今でも死ぬつもりはねえけど、何か考えがあるんなら従ってやるよ。それより良太、気になったんだけどよ、どうして君付けなんだ? さっきは呼び捨てにしたじゃねえか」

「さっきは戦闘中でしたから咄嗟に……」

「だったらこれからは呼び捨てでいいぜ、俺もそうするし、PTで長ったらしく呼び合うのも面倒だろう」

「あっ、だったら私も美愛って呼んでくれませんか、その……そっちの方が早く指示を受けられますし……」

「そういうことでしたら私だけっていうわけにはいきませんね。PT内の会話でなら由利香と呼んでもよろしいですよ」


確かに効率的にも、よそよそしく指示をだすのはよくわない。ここは言葉に甘えて呼び捨てでいかせてもらうことにした。


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いきなりダンジョンで俺の天賦の才がバレる RYOMA @RyomaRyoma

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