第8話 生徒会班

生徒会長の話通り、運動部を中心に探索隊が組織されることになった。うちの学校は全国的にも強豪とされる部活がいくつもあり、そんな強豪運動部が中心となり選抜される。


予想通りというか、選抜メンバーは、弓道部、アーチェリー部、剣道部などから多く選ばれ、単純な体力面から柔道部、野球部からも多数か選出された。


そんな精鋭とはまったく別の枠として、生徒会直属の探索隊も作られることになったのだけど、そっちは俺に一任されているので、自由に学校中からメンバーを選べる。


一人はすでに決まっていた。その一人とは天野さんだ。能力的には他に適任者がいるのだけど、彼女は誠実性が高く、几帳面で意外に度胸もある。探索時に何か有益な発見をした時、それを独占しようとは考えないだろうから、正論要因としても重宝される。探索隊は一班五名だ。俺と天野さんの他に三人選ぶ必要があった。その三人ももうめぼしはつけてあった。



「はぁ?! 俺に探索隊に入ってくれだと?」


まず、最初に声をかけたのは二年三組の木島龍平だった。中学から知っている人物で、かなり素行が悪いとされている。しかし、それは一般的な世間の評判で俺は彼をかなり評価していた。驚異的な身体能力に、実は正義感の強い性格、それになにより弱者に優しく公平だった。昔から喧嘩ばかりしているが、そのほとんどが弱いものを守る為で、俺も実際、彼に助けてもらったことがあった。


「みてのとおり俺と天野は戦うことに慣れていない。君なら怪物相手でも戦えそうだし、頼りになるから」

「ふんっ、それで俺になんの得があるんだよ」

「そうだな、探索隊のメンバーはその性質上、カロリー消費が多くなる。だから食事の配給が増えるんだけど、それがメリットになるかな」

「なるほどな、この状況じゃ、食うのが唯一の娯楽だからな、最高の報酬と言えばそうだな……まあいい、入ってやるよ。その代わり俺の足を引っ張るんじゃねえぞ」


おそらく食事の件は単なる言い訳で、そんなものなくても協力してくれただろう。彼はそういう男だった。


二人目は元野球部の深田信長、エースで四番だったが、事故で肩を壊し球を投げられなくなって野球部を辞めた不運の人物だ。部活は辞めたが、実は完全に復活することをあきらめたわけではなく、自主練習でまだ野球を続けている。野球部を辞めたのは部活のぬるい練習ではとても復帰できないと判断するような熱血漢で、正義感も強く、信頼に値する人物だと思う。


「探索隊だって? そういや野球部の連中もそんな話していたな」

「部活の選抜組とは違って生徒会直属の探索部隊なんだけど、協力してもらえないでしょうか」

「生徒会直属ね……まあ、外に出るほうが鍛えるには都合がいいか、いいぜ、その話のってやるよ」


なんだかんだ言ってこの二人は探索隊に加わってくれると予想できていた。問題は残りの一人、実は最大の戦力として考えている人で、安全に探索する為にどうしても欲しい人材だった。だけど、前の二人とは違い、反応が予想できないのが難点だった。


「本当に花京院さんに話しかけるんですか、私、近づくだけで緊張します」

これから話しかける人物は天野さんにとっては雲の上の人物のようで、体を膠着させて、緊張感がこちらにも伝わってくる。


「ああ、彼女にはどうしても探索隊に加わって欲しいからね」


花京院由利香── 才色兼備、文武両道のお嬢様で、この学校には場違いの才女である。どうしてこんな庶民的な中級学校に在籍しているのか詳細はしらないが、なにやら理由があるのは間違いないだろう。


「あら、桜宮良太さん、なにか御用かしら」


驚いた。どういうわけか花京院由利香は俺の名を知っていたのだ。まったく接点もなく、目立つ行動もしていないはずだけど、どうして俺のことを知っているのか訳がわからなかった。


「どうも初めまして、花京院さん、実は貴方にお願いがありまして……」

「探索隊の話かしら? さっき運動部選抜から誘われましたけどお断りしたばかりですけど」


やはり、花京院さんほどの人物は運動部選抜からも誘いがあったようだ。


「こちらは生徒会直属の探索隊になります。活動は特に運動部選抜と違いはないので、再度お願いするのも憚れますが、どうしても貴方が必要です。どうか、探索隊に加わって頂けませんでしょうか」


「はい、わかりました。それではお受けします」


一瞬、我が耳を疑った。さらっとお受けすると言ったのを聞き逃しそうになってしまった。

「えっ、本当にいいんですか」

「もちろんです。探索なんてドキドキする言葉じゃないですか、私、冒険とかそう言うの嫌いじゃありませんのよ」

「それじゃどうして、運動部選抜の誘いは断ったんですか」

「あちらは暑苦しそうでしたし、あちらを仕切っているの体育の加苅先生でしょ、あの人、苦手ですの……」


「加苅先生が運動部選抜を仕切ってる!? それは本当ですか!」

初耳だった。運動部選抜は運動部連合会の仕切りだと聞いていたのに、まさかどういう経緯でそうなったんだ。


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