異世界召喚されたけど追放されたので娼館通いしてたら何故か美少女ハーレムが出来上がった件について

カラスバ

第1話 召喚されたので娼館に向かった

 結論から言うと追放された、のだろうか?

 何でもこの世界の人間界は現在魔王率いる魔族に侵攻を受けていて、それを何とかして退ける為に異世界から勇者を召喚する事になったらしい。

 そして、召喚された勇者は二人。

 一人は平井未来という少女。

 聞いたところによるとまだ高校生の日本人の少女だ。

 どう考えても魔族と戦えそうにない見た目をしていたが、しかし勇者として召喚された際に与えられる能力はまさに勇者って感じのものだった。

『聖剣召喚』『無詠唱魔術』『金剛力』『不死鳥の加護』、その他諸々。

 とにかくてんこ盛りでこりゃあまさしくチート勇者だなと俺はちょっと呆れた。


 対し、俺。

 天音銀河はどうだったかというと、与えられた能力は一つだけだった。

『複製』。

 ぱっと見強そうな能力だったが、しかし物質の質量が大きければ大きい程消費魔力が大きくなるし、それがマジックアイテムだったら一つ複製するだけで息切れする。

 マッチ一本程度だったらいくらでも複製出来るが、武器、鉄剣とかは一度に10本程度が関の山。

 そんな、使いどころが分からない能力だった。

 少なくとも魔族討伐には向かないのは間違いない。


 そんなへっぽこ勇者の扱いについて王国の人間は迷いに迷った結果――最終的に大金を握らせとりあえず放置する事にしたらしい。

 城に置いておく事は出来ないが、とはいえ見殺しには出来ない。

 なので大金を持たせて自由にさせ、その後は個人の自由にさせてうやむやにする。

 そんな結論だった。

 まあ、別に俺はそれでも良い。

 もう一人の勇者、平井未来ちゃんには悪いけど世界を救うために戦うなんて無理だと思っているし、戦いなんてもってのほか。

 平和な王国の都市で平和に暮らせるなら良い方だろう。

 何なら死ぬまでここにいても良いとすら思っている。

 幸い、俺は元の世界にそこまで未練はないし、俺の事を心配してくれる人も既にいなかった。

 むしろブラックに片足を突っ込んでいた会社から逃げられたので万々歳とすら感じていた。

 異世界召喚様様である。


 そんな訳で俺は王国の人間から貰った大金を持ってしばらく自由に生きていた訳だが――すぐに限界が来た。

 現界、というかなんと言うか。


「性欲を持て余す」


 である。

 性欲を解消する手段がまるでなかった。

 おかずなんて全くなかったし、当然そういった行為をする相手もいない。

 ナンパなんてしたら何が飛び出してくるか分からないし……


 そんな訳でしばらく悩んだ俺は、苦渋の末王国の夜の通りへと向かう事にした。

 夜の通り、というかまんま娼館である。

 そこで女の子に相手をして貰い性欲を解決しようという、極めてシンプルな結論に至った訳だが、しかし。

 お金はあったので高級娼館へと足を運び、そして個室でいざ女の子と向かい合ったのだが、そこで突然心配になってきた。

 

(異世界にも……性病はあるよな?)


 性病とは性行為をした際に掛かる可能性がある病気だ。

 性感染症とも言う。

 それは性行為を行えば誰でも罹患するリスクを負う事になるものであり――何より文明レベルが低ければ低いほどに危険度は増えていくだろう。

 正しい知識はないだろうし、何より回避する手段が少ない。

 回復魔術はあるらしいけどそれが性病に効くかは現状分からないし、とりあえず罹らないようにした方が良いのは間違いない。

 いや、一番はそれこそ性行為をしないのが一番なのだが。


「うーん……」

「ど、どうかしましたか?」


 いきなり腕組みをして悩み始めた俺を見、娼婦の女の子はおろおろする。

 そりゃあそうだ。

 そして俺はしばしどうすれば良いかと悩んだのち、そう言えばと思いポケットから財布を取り出した。

 それはこの世界に来てから使っているものではなく、前の世界から持ってきていたものだった。

 その中から切手より大きいサイズの正方形の袋を取り出す。

 それは何か。

 避妊具である。

 いやー、持ってきてて良かった。

 

 とりあえず今回で使い切る訳にはいかないので『複製』をして数を増やしておき、それを装着する。

 そしていざ行為に及ぼうとした時、何やら娼婦の女の子が動揺しているのに気が付く。


「そ、それは何ですか?」

「あー、これ?」


 そう言えば、この世界にはまだ存在しないものか。 

 そう思いつつ俺は答える。


「これは避妊具と言って文字通り避妊を目的とした道具で、後は性病のリスクを抑える為に用いるものだよ」

「……!!!!」


 ばっ、と。

 彼女は俺の手を取り、鬼気迫る表情で尋ねてきた。


「その話、詳しく」

「お、おう」


 それから俺の身の上の話とかこの道具の話とかを話した。

 なんかその頃になると息子も萎えてしまっていたが、女の子がかなり怖かったのでそれどころではなかった。

 そして一通り説明し終えた後。

 娼婦の女の子はしばし考え込んだのち、俺にゆっくりと尋ねてくる。


「その「こんどーむ」? を、我々が買い取る事は出来ますか?」

「……へ?」


 でもまあ、よくよく考えれば当たり前の事だった。

 この文明レベルがまだまだな世界で娼館で働く人達はみな、常に病気のリスクを抱えている。

 それで死んでしまう人もいるだろう。

 そんな時、それを回避する方法を提示されたのだ、それに縋りたくなる理由はとても分かる。

 そして俺としては、この避妊具は今のところいくらでも生産出来るのである。


「ああ、良いよ」


 俺は二つ返事で答えるのだった。



 ………………


 …………


 ……


 

 それから、いろいろな事があった。


 避妊具を量産するに辺り、俺は魔力を大量消費するので娼館側から魔力を回復するためのポーションを与えられる事になった。

 後は衣食住。

 安全な商売をするために必要な出費という事で俺は高級娼館でVIP対応を受ける事となったのである。

 毎日毎日、避妊具を生産する。

 生産自体はすぐに出来るのでいつでも休めるし、休憩する時は可愛い女の子達が世話をしてくれる。

 まさにハーレムの日常である。

 

 ……この世界に来ていろいろあったけど、なんだかんだで俺は結構幸せに生きている。

 美味しいご飯、安全な寝床、清潔な衣服――はこれも『複製』で用意したが、それはともかく。

 毎日が充実をしている。

 性欲を持て余す事もなくなったし、イヤー本当に幸せだ。

 俺、本当にこの世界に来て良かった。


 めでたし、めでたし……






















 で、終わる事はなかった。



「アマネギンガ!! お前には王城へと出頭して貰う!!!!」

「……へ?」


 なんで?

 

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異世界召喚されたけど追放されたので娼館通いしてたら何故か美少女ハーレムが出来上がった件について カラスバ @nodoguro

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