第2話 電話カウンセリング
「あなたのような生い立ちなら、うつ病にものなるわよ」
電話カウンセリングで言われた言葉だ。
そう言われて嬉しかった。
電話越しにわたしの辛さが伝わり受け止めてくれた感触があった。
涙が出た。
私は扇風機が回る音が怖い。
幼い頃から体験してきた不安による体の硬直。30歳を過ぎても治らなかった。
1日中、ベッドに寝転がり動けない。 なにもできない、風呂に入れない体が臭くなっていく、専業主婦なのに家事ができず溜まっていく洗濯物を見ると涙が溢れてくる。
すがる思いで電話カウンセリングを受けた。
すべて話した。
辛かったことすべて。
そうすることで不安は解消されていった。
幼少期に母親と生き別れた話、登校拒否の話、父が借金の保証人になり遺書を置いて出ていった時の話、パート先の店長から言葉のセクハラを受けた話、自殺未遂、うつ病で精神科に通っている入院は4回したこと。
1度目の入院は保護室だったこと。
長い闘病で疲れ切っていること。
1週間ごとに電話カウンセリングを受けた。
自分の人生ながら、波瀾万丈でしんどい思いばかりしてきたと悔しかった。
涙が出た。
出ると止まらなくなってきた。
わたしは今まで何度泣いて、これからどれだけ泣けばうつ病がわたしを「許して」くれるのだろう。
わたしはなぜかうつ病に「許してください」と泣くのだ。何を許して欲しいのだろう。
闘病で心は闇をさまよい、混乱していた。
わたしはわたしが思うより、大丈夫ではなかった。
頼れる人はいない、夫にも父親にも頼れない。一人で抱え込むしかなかった。理解されない。理解を求めれば苦しい。
だから、物言わぬ物を相手に助けを求めた。
そこらへんにあった紙切れに、
「たすけて、たすけて」
と書いて自宅の郵便受けに入れた。
奇妙な行動だがわたしの中では理にかなっていた。わたしはわたしに助けを求めている。
わたしを助けられるのは、わたしだけ。
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