おばけのじぶんさがし

稲月奨

ぼくは何なんだろう

ここはこの世界のどこか。

ぼくの知らない場所。

どれくらいかはわからないけれど

眠っていたみたい。

ぼくってなんなんだろう。

そう思ったおばけは旅に出ることにしました。


道ゆく人の前を通ってみたけれど

誰もぼくをみてくれない。

ぼくってなんなんだろう。

鏡の前に立っても自分は映りませんでした。

綺麗な羽があるのかな。

立派な牙がついてるのかな。

そんなことを考えながら道を進んでいると

ねこが現れました。


「そこでなにしてるんだい。」

ねこが言いました。


「何って、うーん。自分探し、かな。」

おばけがそう答えるとねこは


「ふーん、そうなんだ。

ところでそこ俺の場所なんだけど

どいてもらってもいい?」

と言いました。


ねこにそう言われると、おばけは

「あっ、ごめんね、知らなくて。」

と言って、ねこの特等席から横にずれました。


「ところで、きみはなんなんだい?」

おばけが聞きました。


「むずかしいこと言うんだな。俺はねこだ。」

とねこが言いました。


続けておばけは聞きました。

「じゃあぼくは何に見える?」


ねこは

「むずかしいこと言うんだな。

お前は何になりたいんだ?」

と言いました。


「んー、よくわかんないや。」

おばけはそう答えました。


するとねこが、

「変なやつだな。

まあでも俺みたいになればいいんじゃないか?

自由だし。割と幸せだぞ。」

と言いました。


「そうなんだ、考えてみるよ。」

おばけがそう言うと、

ねこはいつの間にか昼寝を始めました。


おばけはねこの寝顔を見て

ねこも悪くないんだろうな、と思いました。

「おやすみなさい、ねこさん。」

と言うとおばけはあっという間に

ねこの姿になりました。

おばけは旅を続けます。

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