第23話 初めての縄張り
危なかった。
僕は、縄張りや敵の強さについて舐めていたようだ。
僕はいわばソロで行動する冒険者のようなもの。
もともと不利な条件で戦っていたのだ。
相手の有利な条件で戦う必要がない。
まずは僕自身の負担を減らすための住処や縄張りを見つけなくてはならない。
下層へ行くためには、この階で縄張りの作り方を覚えておくと良いだろう。
ある程度、慣れてきてから次の階層に行ってみよう。
僕は敵が現れることに警戒しつつ、ダンジョンの中を探索し続けた。
いつの間にか【マッピング】がLv2となっている。
レベル1と違うところは、【縄張り探索】機能がついているところだ。
自分の周囲のエリアに縄張りの有無とその主が確認できる。
縄張りが多い所は、モンスター同士の争いが絶えないらしい。
僕が見つけたエリアは、幸いにも周囲に他の縄張りの主はいないようだ。
2階層の一番奥のエリアに当たるので、あまり人気はないのかもしれない。
都会から離れた郊外のようなものだろう。
環境は通路の行き止まり部分。
10畳ほどの間取りで、ダンジョンにしては狭い小部屋のようなエリアだ。
行き止まりまでの通路は30mほどで、一本道となっている。
ダンジョン奥・一本道・小部屋・宝箱と条件が揃っていれば、冒険じゃ出なくても何か貴重なアイテムがあると期待できそうだ。
ただ、完全な行き止まりとなっているので、相手が僕よりも強かったら逃げ場が無い。
まずはこのエリアを拠点とし、スキル獲得や習熟、レベルの上昇を狙おう。
僕はステータス画面からアバターポイントをチェック。
現在保有するアバターポイントは15,326p。
アバターリストを開き、使えそうなものが無いかをチェックした。
まずは戦いで傷ついた箱を修理するために、スタンダード宝箱用の補修材、補修キットを購入(-2000P)。
続いて絨毯を購入(ー5000p)。
絨毯?
宝箱の下に絨毯が敷かれてあれば、なんだかそれだけでも高級なアイテムが入ってそうな気がするよね。
簡易吊り天井を購入(ー5000P)。
これは天井の一部を落下させるアイテム。
ダンジョンに設置される罠の定番だ。僕もゲームの中では何度も引っかかったことのある思い入れのある一品。
残りのPは一旦保留とした。
補修材で宝箱の傷を修復し、絨毯を敷き、吊り天井を設置。
後は冒険者が来るのを待つだけだ。
・・・・・・・・
一体どのくらい待ったのだろうか。
いくら待っても誰も通る気配すらない。
モンスターでさえも現れない。
あまりにも辺鄙な場所だから冒険者たちは気づかないのか?
ダンジョン奥にあるたった一つだけの宝箱、設定的には魅力的なはずなのに。
しばらく何も食べていないのでお腹も空いてきた。
このままでは飢えてしまう。
僕は現状を調べるべく周囲の環境のチェックの為、行き止まりの小部屋を離れた。
通路の入口付近を見渡しても、冒険者どころかモンスターの姿もない。
さらに調べてみると、このエリアの近くに下の階層へ向かう階段があったのだ。
確かにそれなら、あの通路には何の魅力も感じないだろう。
いくら環境が良かったとしても、次の階へ行く方が稼ぎたい冒険者にとっては有用かもしれない。
僕はまた選択肢を迫られた。
①縄張りの場所を変える
②あの通路に行きたくなるようにさせる。
僕の取った選択肢は、
②だ。
僕が今後戦うであろう相手は知恵を持つ人間だ。
彼らのことを深く知らなければ、例え力で上回っても楽に勝つことは出来ないだろう。
僕の立てる戦略は、常に彼らの上でなければならないのだ。
そのためにはこの程度の困難など解決して当然。
冒険者に人気のない通路なら、思わず行きたくなるような通路にしてしまえばいいのだ。
じゃあどうすればいいのだろう?
僕はふと道路標識を思い出した。
矢印を見ると、どうしてもその方向に意識が向いてしまう。
この世界では通用するか分からないが、矢印の指す方向には興味を感じるかもしれない。
僕は舌に【斬撃Lv2】を付与し、階段近くの通路に大きな矢印を掘った。
このまま掘っただけではすぐに消えてなくなってしまうだろう。
僕はその矢印に向かって、魔眼の8つのスキル【魅了】【千里眼】【石化】【吸収】【威圧】【傀儡】【変化】【爆破】の中から石化を選択。
矢印に向かって石化を使用した。
ぐぅぅ
激しい魔力消費・痛みと引き換えに、矢印は徐々に石化していく。
ほどなくして矢印は石のプレートとなった。
これでよし。
ただ、結構しんどいな。
僕は小部屋までの間、目印になるように矢印のプレートを作り続けた。
「【魔眼Lv1】がLv2となりました」
5つほど作った辺りより、魔眼のレベルがアップ。
【毒】【汚染】【凍結】と新たな魔眼スキルも獲得したようだ。
魔眼のレベルがアップしたことにより石化までのスピードがUPするも、一回に使用する魔力の消費量が増大。
なんとか小部屋までの道しるべを作った時点で、僕の魔力は尽きてしまった。
応急処置スキルを使用し、なんとか魔眼1回分は使用できるようになった。
僕は絨毯の上に乗り、【擬態Lv4】を使用しつつ冒険者たちが来るのを待ち続けた。
数時間くらいが経過した頃、遠くで通路近くを歩く人の声が聞こえてきた。
男性数名、女性の声は聞こえない。
おそらく5名くらいだろう。
声から判断すると若い男性が中心で、中年の男性が1人?
おそらく彼がリーダーだろう。
僕は【意思疎通Lv2】を発動。これから始まるであろう戦いに備え始めた。
縄張りに入ってくる奴らとの初戦闘。
僕の胸は段々と高まっていた。
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