第24話 闇の中へ

僕の縄張りに近づく彼らの声と足音が近づいてくる。

【聴覚Lv5】を取得した僕は半径50m程なら、はっきりと音を拾うことが出来るんだ。

次の角を曲がったところが僕がいる小部屋に向かう通路。

僕の心臓が音を立てて鳴り始める。

澄み切った湖の上で釣りをしているかのごとく、今の僕には餌に食いつく魚たちの動きがはっきりと感じられる。


来た!

通路の入り口に訪れたのは、5人組の男性たち。

僕は【視覚Lv5】を使用し、より集中して彼らを観察した。


人間(ヒューマン)5人で多種族は含まれていないようだ。

4人が先頭を歩き1人がその後ろからついていく。

4人は比較的若そうだ。おそらく18~25歳までの間だろう。

後ろの比1人は30代後半~40代前半?

他の4人と比べ落ち着いた感じだ。


5人ともダンジョンを探索するには軽装に見える。

動きやすそうな服装で手にはナイフのような物を構えている。

後ろの一人は手には何も持っていないが、背中に大きな曲刀を携えている。


僕は【鑑定Lv5】で前方の一人と後方の一人を調べてみた。


【人間】

職業:盗賊

Lv 10

HP(体力):800

MP(魔力):0

SP(スキルポイント):230

筋力:250

耐久:180

知力:300

器用:500

俊敏:600

運:300


スキル:短剣Lv4 弓Lv3 逃げ足Lv3  


【人間】

職業:盗賊

Lv 23

HP(体力):2400

MP(魔力):100

SP(スキルポイント):1200

筋力:1000

耐久:700

知力:1500

器用:1400

俊敏:1500

運:700


スキル:斬撃Lv4 2連撃Lv3  逃げ足Lv5  不意打ちLv5 奪うLv7  ※※※ ※※※


やはり、後方の男の方が強い。このパーティーのリーダーだろうか?

いやパーティーというより盗賊団の一因だろう。

僕の姿(宝箱)を見つけて少し気分が高揚しているのだろう。

【意思疎通Lv1】で彼らの感情を探ると、「黄緑色(喜び)」となっていた。


僕に近づくにつれ、前方を歩く一人の盗賊の感情が、喜びから興奮に変わっていく。

自分の気持ちを抑えきれなくなったのか、急に僕の方へ全力で駆けてきた。


こいつ馬鹿か?

罠があるかもしれないって考えないのか?


他の物には一切目もくれず、僕の方へ一直線に向かってくる盗賊バカ

一瞬攻撃してやろうと思ったが、攻撃すると他の4人に警戒、もしくは逃げられてしまう。

せっかく初めて来てくれたお客さんだ。

みんなが満足いくまでもてなす必要がある。


僕の元に到着した盗賊バカは、いきなり僕の蓋を開けようとした。


開けられるとマズイ!

僕の宝箱の中には弓、ボロボロの地図、とらばさみしか入っていない。

どう見てもガラクタばかりだ。

もう少し欲しくなるようなアイテムも収集しないと。



中身に気づかれると、僕の元から去ってしまうだろう。

せめて他の4人が到着するまで耐えなければ。


ガチャガチャ

僕を開けようとする盗賊バカに対して、蓋を開けまいと抵抗する。


開けられないことを察した盗賊バカは、手招きで他の盗賊達に合図を送る。

急いで駆け寄る前衛の3人、リーダー風の男はゆっくりと近づいてきた。


前衛の三人の盗賊のうちの一人が、針金のような物を取り出した。

そのまま僕の方へ近づいてきた。


ピッキングするつもりだ!


盗賊は針金っぽい物を僕の鍵穴に差し込み、上下左右へと針金を動かした。


これは少々鬱陶しい。

痛くはないのだが、鼻に綿棒を突っ込まれている感じ。


ピッキングしようとしても開かないことに、苛立ちを感じたか盗賊はさらに奥へと針金を突っ込んだ。


い、いたい。

さすがに僕の我慢はもう限界に達していた。


僕は全員が部屋に入ったことを確認する。

瞬間的に口を開け驚く盗賊を一口で丸飲みにした。


「#”&%&?」

突然動き始めた宝箱に一同が騒然。

呆気にとられる盗賊バカに近づき、【食べるLv8】で彼を平らげようとした。


ドンッ

僕は横からの衝撃を受け、地面に転がった。

リーダーだ。

彼は僕にタックルを行い、盗賊バカに対する僕の攻撃を回避したのだ。

一口で食べそこなったが、彼の左腕の味わいが僕の口中に広がる。


「¥:#%!」

左腕を失った盗賊バカは大声をあげながら地面を転がりまわる。


他の2人の盗賊はリーダーの号令の元、僕を中心として散開。

十分な距離を取りながら攻撃の隙を伺っている。

リーダーも曲刀を構え、じりじりと僕の左方向へと回りこもうとしていた。


緊迫する状況の中、盗賊バカは僕に向かって、転がっている石を投げつけてきた。

僕が一瞬、盗賊バカに気を移した瞬間、盗賊たちは一斉に襲いかかってきた。


正面から飛びかかる盗賊、ジャンプして上から襲いかかるもう一人の盗賊、左方向から飛び込むリーダー。


僕は用意していた吊り天井レベル1を作動させた。


ジャンプしていた盗賊の頭上から、急速に天井が落下する。

前方と左側から攻撃を仕掛けた盗賊たちは驚いて攻撃を中断したが、すでにジャンプをしていた盗賊は避けることが出来ない。


空中の盗賊は落下する吊り天井にまともにヒットし、激しく地面に叩きつけられたのだ。

倒れた盗賊は頭から大量の血を流し、そのまま動かなくなった。

盗賊にヒットするとすぐに吊り天井は元の位置へと上昇をし始めた。


罠としては汎用性がありそうだな。


「〇”#≫※!」

リーダーは盗賊に指示すると同時に、もう一人の盗賊が僕に向かって飛び込んできた。

僕は彼の攻撃を【方向転換Lv5】でかわし、その瞬間に【毒針Lv5】を使用。

間一髪でかわす盗賊は、僕に向かってナイフで切りつけてきた。

僕はそのナイフを間一髪、蓋で挟み込む。


意外とこいつ強いな。


ドン

僕の後ろから鋭い痛みが襲った。


リーダーだ。

がら空きの僕の背後に忍び寄り、曲刀で切りつけたのだ。

幸い僕の装甲の方が彼の斬撃よりも上回っていたので、大きなダメージとはならない。

ただ、油断するとやられてしまうのではという思いが僕の頭を駆け巡った。


戦い慣れている。

リーダーは他の盗賊とは違い、頭を使って僕の隙を誘おうとする。

何やら奥の手もあるかもしれない。

僕はより一層戦いに集中し始めた。


僕は蓋で挟んでいるナイフを舌で絡め取り、ナイフを盗賊の足に突き立てた。

うめき声を上げその場にしゃがみ込む盗賊。

僕はとどめを刺そうと舌を再度振り上げた。

実はこれは演技。

盗賊バカの時のようにリーダーが助けようと僕に攻撃を仕掛けた際に、このナイフをリーダーに突き刺そうと企んだのだ。


しかし、リーダーは助けに来ず、距離を取ったまま。

僕はそのナイフをリーダーに投げつけたが、あっさりとかわされてしまった。


流石に戦い慣れた盗賊、簡単に僕の作戦には引っかかってくれそうもない。

しびれを切らした僕はリーダに向かって突進していった。


ドン。

後ろから衝撃を受けて僕は前のめりに倒れた。

なんと倒れていた盗賊が僕に向かって思いっきりタックルをしてきたのだ。

ここぞチャンスとばかり、曲刀を持ち換えて斬りかかるリーダー。

実はこれは僕の作戦だった。


わざと前のめりに倒れて攻撃を誘った僕。

【落とし穴Lv1】

僕は攻撃が当たる瞬間に自分自身に落とし穴をかけ、落とし穴に落ちると同時に彼の攻撃をかわした。


驚くリーダーを舌で捕らえ、そのまま僕の口の中へ放り込もうとする。

あがくリーダーは曲刀を地面に刺し、引き込まれまいと耐え続けた。

しかし、そんな努力も僕には通用しない。

僕は【溶解Lv4】で曲刀を溶かし、そのままリーダーを箱の中へと引き込んだのだ。


リーダーが食べられる様子を目の当たりにした残りの二人。

すでに戦う意思は無いようだ。

しかし、ここで逃がしては、縄張りの位置が他の冒険者にも知られるかもしれない。

もしくは、準備を整えて僕を退治しにくることもあり得る。


まだしばらくはこの地で、狩りを続けたいと思っていた僕は怯える盗賊の前に向かい【食べるLv8】を発動。

跡形もなく平らげてしまった。


僕が盗賊を攻撃している間、盗賊バカは通路に向かって走りだした。

僕に食いちぎられた左手も振りながら、一心不乱に出口へと向かう。


残念ながら僕は一人も逃がすつもりは無かった。


ガチン

金属音がして、前のめりに倒れる盗賊バカ

僕が戦闘前に仕掛けたとらばさみに足を挟まれたのだ。

盗賊バカは足を押さえながら激痛で暴れ回っている。


僕はゆっくりと背後から近づき、彼を一口で平らげたのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る