第5話 神様(理)からの天罰


「キーンコーンカーンコーン...」

朝の出席が始まるチャイムが鳴った。

ただ何もしないままトイレから出てきて、急いで教室に戻ろうとしたがなんとなく手を洗ってから戻った。

廊下を走り教室へ戻る時、先生が来るのが見えた。

無事に席についた。

そして担任のヤンキーっぽい先生が教室に入って来た。

「よっし!席替えするぞー!」

とうとう来てしまった、悪魔の席替えが。

席替えとは、くじ引きでどの席になるかが決められる。

だが、そこで問題が発生する。

席替えをすることにより隣の人、周りの人が決められるが、周りの人が全員女子というハーレム状態だってあり得る。

その席に決まった途端、その先の授業での話し合いなどが気まずくなり、男の本性の「隠キャ」が発動してしまう。

そんな事があれば、女子からの印象が駄々下がりしてしまう。

そんなのは最悪だ...とか思っていたらくじ引きの番が自分にも周ってきた。

段ボール箱を円状にくり抜かれている穴に手を入れ、てきとうに紙のくじを引いた。

中身を見ると、番号は「十二」番だった。

皆のくじが引き終わると先生が黒板に席順の番号をてきとうに書き出した。

自分の場所は真ん中の一番後ろの席だった。

皆も自分の席を把握したところで移動が始まった。

…まあ、なんとなく予想はついてた。

自分の席は後ろ。

そして隣には...

「ウェーイ!近くの席だね!やっぱ運命??」

「んなわけない...とも言えない....」

まぁどうせ、あの変な「理」とかなのだろう。

もうどうすりゃあいいんだ...

そこで先生がまた喋り始めた。

「みんな席につけたか?今度この班で研修旅行のチームになるぞ!」

「え〜...」と反応したいが、ここは通り越して「は?」だった。

頭の理解が追いつかないままボーっとしていると授業の時間が来てしまった。

授業の号令が始まり、机に腕を交差させ頭を落として寝る体制を作った。

早速寝ようとしたが思わぬ邪魔が入った。

「ふー...透くん。」

耳元に息を吹きかけ囁いてきた。

俺はその刺激に驚き、授業中ながらも「ウワァ!」と叫んで席を立った。

「そこのやつうるさいぞ。」と先生から怒られ、優香の方を見た。

だが優香は、しらばくれていた。

先生をもう一度見てから席に座った。

数分経った後、もう一度優香から声を掛けられた。

「......あのごめん(笑)。」

「何するんだよ!」

「あの〜実は教科書を借りたくて....」

「イ ヤ で す!」

俺にちょっかいをかけてきたのは、教科書を借りたかったらしいのだが、流石に今度は俺からの仕返しで貸さなかった。

「お願いお願いお願いお願いオ ネ ガ イ!!」

「無理〜。」

意地でも無理と言ってやったら最高の瞬間が来た。

「じゃあ22ページの3段落からこの列の人達に読んでもらいます。では、月見さんから読んで下さい。」

その言葉が部屋に響き渡った瞬間、優香は焦り出した。

「ヤバいヤバいヤバいって!マジでお願い。貸して!」

「どうしようかな?」

「そういうのいいからマジで!」

優香は前の方と俺を何度も振り向き返して物凄く焦ってる素振りをしていた。

そんな焦ってる間も読んでいく人は変わっていった。

そこで提案を投げつけた。

「ではここで提案。これから、俺とあまり関係を持たない事。それなら貸してやってもいいよ。」

あの「理」から逃れる為、少しでもあの人と関係を絶たなければいけないと思い、これを提案にかけた。

「ぐぬぬ...今恥をかくよりはマシだ...しょうがない。提案を受け入れてあげる。」

案外素直に受け入れてもらった。

そして教科書を渡した。

優香の前の席まで順番が周ってきた。

だがここで、思わぬ事が起きる。

優香の出番の目の前で文章が終わり

「じゃあ今度は楠木から前へ読んでもらおう。」

と先生が順番を変えてきた。

いや、流石にそれは無いでしょぉぉ。

一旦優香から教科書を取り返そうとした。

だが俺の言葉が届いていないかの様、俺をシカトした。

「おーい楠木。22ページの14段落からだぞ。」

俺は悟った。

優香にあの条件をかけ、あいつが反応しない事。

「貸して!」という素振りをしても無視してきた。

しょうがなく諦めて、先生に言った。

「すみません。教科書を忘れてしまいました。」

「おいおい、初日の授業中に寝てて忘れ物を先生に言わないなんて、女に笑われるぞ(笑)」

先生は笑いながら俺を説教してきた。

それに釣られ、皆も笑っていた。

「俺は悪くない。俺は悪くない。」と心の中で思いながら優香の方をしれっとした顔でゆっくり振り向いた。

周りがまだ、少々笑い声が続く中、優香は俺の反対方向を向いて微笑している様な動作をしていた。

「ほら、隣の人から貸してもらって読め。」

「...は〜い。」

そーと、机を優香の席まで近づき教科書を見せてもらった。

教科書を読んでいると隣の優香から「...ク(笑笑)」と笑ってるのを我慢してるかの様な声がずっと聞こえてた。

地獄の授業が終わり、優香の席を訪ねた。

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