第4話 神様の悪戯

 声が耳元で聞こえたため目を開けると、濃い霧の中の鳥居に立っていた。

 そこにはやはり、自称神様野郎が目の前に立っていた。


 しかし、流石に目の前に居たことに驚き、自称神様野郎から遠くまで離れた。


「なんで、自称神様がいるんだよ。」

「あら、『近々会う』と前におっしゃりましたよ?」

「それよりも、お前に話したいことがある!なんで、優香が居るんだよ!おかしいだろ!」


 自分でも一応出会ったことが自称神様野郎のせいだとわかっているが、確認してみた。

 だが、返ってきた言葉は予想通りの「前にも言った」という言葉だった。


 そして、自称神様野郎は俺を遠まわしで揶揄う様に言ってきた。


「あら、でも可愛かったではありませんか?それなのに、不安でもあるのですか?」

「確かに可愛かったけども...けど、いきなり会うとショックを受けるよ。」

「なら、慣れるまで一緒に居ればいいじゃないですか?」

「...じゃあ一緒にいなければいい。あなた様には悪いけど、やっぱり恋人は自分で決めます。色々ご迷惑をかけました。」

「謝れても、あれは決定されてしまった出来事ですもの。早く付き合わないと、『理』が暴れだしてしまいますわ。」

「??あの...その『理』が暴れるとは一体なんですか?」

「え?あ~もう、そんなこともわからないのですか?つまり、決められた事を実行する為にどんなことでもしようとするのです!例えば、二人を何かのきっかけで距離を縮めようとしたり、あるいは、自然的に縮めようとしたり...」

「....やっぱどうにかできませんか?」

「無理です...あ、一回告白的なものを言ってみたらどうです?落ち着くと思いますけど??」

「え〜まずあの子を好きになるなんて。あ...」


 話の途中でまた視界がぼやけた。


 ベットで眠りから目覚めた。

 時計を見ると時間は六時になっていた。

 明日の準備をしようと予定表を見て、教科書類をバックに詰めた。


 バックに詰めてる途中、プリントを見つけた。

 今日の帰りの会の途中に配られたプリントだ。

 その内容は、来週に備えている新入生研修と言われる、遊びみたいな行事だ。

 場所 持ち物 時間割を見た。


 そして、母からご飯の時間だとドア越しから聞こえ、台所へと向かった。


 次の日になった。

 今日も学校があり時間に余裕を持って家から出た。

 

 エレベーターを待っていると、ドアが開く音がした。

 革靴の音が近づいてくる。


「あれ?透くん?」


 なんとなく予想はついていた。

 あの自称神様野郎が言ってた事だから、もう驚く事はない。


「お...おはよう。」

 

 エレベーターの扉が開いた。

優香と一緒にエレベーターの中に入り、沈黙の時を過ごし、エレベーターから出た。


「ねぇ。一緒に行こうよ。」

 彼女は微笑を俺に見せつけてきた。


「はぁ...いいよ。」

「なんでそんなにため息するのよ。」

「君が可愛い事と思ってしまう自分に呆れているんだよ。」

「はぇ?」

 

 俺らは自転車には乗らずに、歩きながら話して登校する事になった。

 もちろん、いつもの通り道の通路でだ。


「もしかして...私と付き合ってくれるの(笑)??」

「いいや、まだ付き合うことはできないね。」

「なんでよ?」

「僕は君の事を好きになる事は『多分』できない。だから、僕を好きにさせてみてよ。」

「・・・え?」

「.....ごめん冗..」

「君が私の事を好きにさせてみせるわ!!」

 

 軽い冗談を交わした自分が馬鹿だった。

 

 そして頭の中によぎってきたのは自称神様野郎が、いわゆるテヘペロをしている顔が思い浮かんだ。

 心の中で「あの自称神様野郎、騙しやがったな。」と藁人形に釘を刺すくらい怨んでやった。


 まぁなんだかんだ言って、結局は仲良しになった。


 話が進むにつれ学校に着いた。

席についたが、朝礼までトイレに籠って時間がくるのを待った。

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