第3話 神様の誘惑

時計の針が午前十一時にまわり、今日の授業が少ないため授業が終わったところすぐに家に帰ろうとした。


自転車置き場へと向かった時、


「透くーん!」


と声が聞こえた。

自転車に目線がいってたが、誰かは声でわかった。

優香だ。

呆れたように返事を返したが、彼女はその返事を聞かなかったように俺の背中に飛びついてきた。


「ウェーイ(笑)。改めて久しぶり、透!」

「...本当に、あのクラスでド隠キャな、ただ絵を描いてるだけのオタクっぽい優香なのか?未だに信じられん。」


真顔で自転車を見ながら言った。


「そんな事を言われると、傷つきますよ〜!」


優香の顔は見れないがなんとなく頬を膨らませて、俺を見つめてるように感じた。

「それより!一緒に帰りましょ!」

「えぇ...」

「いいじゃないですか?久しぶりに帰っても。」

「帰るのは初めてですけど。」

「...知らなーい。私の中ではずっと一緒だった気がしますけどね。」

「それはクラスだろ。」


優香は一旦俺の背中から離れ、俺は自分の自転車を自転車置き場から出し、自転車を引き摺りながら正門を優香と一緒に出た。


「ねぇ何処らへんの場所に引っ越してきたの?」

「ん〜と、一応駅前のマンションだけど。」

「へーそうなんだ。実はね、ワ タ シ も、駅前のマンションなんだよね〜!まさか同じ家だったりして??」

「んな訳ねーだろ。」


学校から真っ直ぐ歩いて行くと、お城の跡が見えた。

学校の途中で通ったが、行く時間もなく、どのような所なのかはわからなかった。

そんな俺の思ってる事を聞かれてるかのように優香は俺に質問をしてきた。


「あそこの城の跡に行った事ある?」

「ねえぇけど。」

「じゃあ行こうよ!せっかくだし。」

「なんでだよぉ〜、せっかく早く帰れるかと思ったのに〜。」

「まだ地元に慣れてないって言った人は誰だったっけ?」

「...わ、わかったよ!たく、行くならさっさと行こうぜ。」

「了解!」


そう言い、城壁が連なる水の手の周りを通りながら、城門まで橋が架かってる場所まで連れてこられた。


「ほら行くよ!」

「はいはい。」


橋を渡り城門をくぐり抜けた。

くぐり抜けたが別に大した物ではなかった。

ただ周りに城壁が立ち並んでいてもう一つの城門が右側にあったぐらいだ。

もう一つの城門を抜けると今度は自然が広がっていた。

自転車を止め、石垣と自然が混ざり合ってる、意外と美しい場所だった。


「ほら、こっちだってば!」


優香に着いて行くとそこは自動販売機だった。

ご飯のね。

優香は財布からお金を出し、自動販売機にお金を入れた。

流石に自分もツッコミたくなり、思わずツッコんだ。


「なんで、自動販売機でご飯買うねん!その為に来たのかよ!?」

「ええやん、もう昼やし。」


優香の言う通り、いつのまにか十二時に時計の針が回っていた。

そして、十二時だと意識してしまい無性にご飯が食べたくなった。


「...ごめん。俺も腹減ったわ。」

「ははは(笑)なんだよぉ、君もお腹空いてたのに『私だけ』みたいなことを言ってたの?」

「...すんまへん。」

「ぷっはははは(笑)

 ぷっはははは(笑)」


俺と優香は同時に笑った。

腹筋崩壊するぐらいの笑いで、腹が痛くなり、その笑いに釣られたまま優香に謝った。


「ごめん(笑)。なんか昔の君とギャップの差が激しすぎて(笑)。」


すると突然「パカ」っという音が聞こえた。

その音の方向を向くとご飯の自動販売機が空いていた。


「出来上がったみたいだね。一緒に食べる?」


優香はぶりっ子のような言葉遣いで俺を食事に誘ってきた。

一旦、ポケットに手を当てた。

手持ちに財布がないか確認したが、運悪く財布を持っていなかった。


「流石に『女性からご飯を貰うのは俺のプライドが許さない。』」

そんな事を昔からの理として自分に受け継がれていたが、「別に幼馴染だし良いのでは?」と自分で決めた事を、簡単に破ろうとした。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」


素直に返事をした。

俺ではない何かが承諾しやがった。

まさに不可抗力ってやつだ。

クソ、恥ずかしい。


そして返事をした後は、一緒にベンチまで歩き、座った。

優香が買ったご飯は、たこ焼きだった。


「ほい爪楊枝。」

「サンキュー。」

「じゃあ頂きます!

    頂きます!」


またしも同時に言った。

たこ焼きは熱く食べづらかったが、割り勘で食べた為すぐに食べ終わりそうだった。

最後の一個は俺にくれて、口にした。

食べてる時に優香は俺に話しかけてきた。


「ねぇ、私達付き合う事はできない?」

「・・・ゲホッゲホッぇえ。」

「だから、私と付き合う事はできない!?」


そこで我に帰った。

神様が言ってた言葉が今現実になっている。

これは罠だ。

だが彼女は理由を言ってくれた。


「だって昔から好きだったもん!ずっと一緒のクラスだったし、君の性格とか色々好きだったもん。でも、昔の自分は見た目が汚かったから自信が持てなくて、それで...」


理由は途中で終わってしまい、彼女の声から涙が出てきた。

俺は少々焦ってそれに答えた。

「昔から好きだったのは嬉しい。えっとぉ、まあ、うん...で、でも。まだ付き合えない。別に!嫌いだとかではないけど、少し時間が欲しい。」

「...うん。」

「ごめん。」

「別に透くんが謝る事じゃないよ。私がいきなり告った事も悪いし。」

「...」

「...」


少々無言が続いた。

多分一分位経った後、帰ることになった。

時間はいつの間にか三時過ぎだった。

急いで昼に来た道を辿って家に帰った。

家に帰った後は、ベットに横たわり携帯をいじった。

だがベットに横たわってると自然と眠気が来てしまい、寝てしまった。

「oーぃ。ぉーい。おーい。あら、来ましたの。」

寝ていたらなぜか、自称神様野郎が居た。

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