第2話 神様は本当に意地悪

俺は早速、今日から高校へ行くことになった。

新しい生活に戸惑いながら、登校する時の鞄に教科書を詰め込んで、引っ越し先の家を出た。


ここは東京とは違う町。

田舎だと思っていた町だが、実際にはそこまででもない。

住んでいる家は静岡駅から近いマンション住宅で、その周りには高層ビルが何件かある。

東京に比べればビルの数は少なく感じるが、都市部の割には静かでいい場所だ。


そんな街の風景を見ている間に、時間は過ぎてしまった。

自転車で高校へと向かった。


朝方の人混みを抜けながら、高校についた。

自転車から降り、高校の正門をくぐった。

桜が舞ってる中、自転車置き場へと自転車を置き、学校を見上げた。

「ここから青春が始まるんだな。」と心の中で思いながら靴箱へ向かった。


靴箱に靴を入れ、教室番号の張り紙を見て自分の教室へと入った。

教室に入る。

周りの人達は仲良く喋っている人が多かった。

多分、同じ中学から来た人達なのだろう。

教室の窓際にある自分の席に座ったが、周りが気になりすぎて落ち着かなかった。


「はあ、落ち着かねぇ...」


そう言い席から立ち上がり、トイレに行こうと思った。

教室を出てトイレの方に向かおうと思ったら、出会い頭で人とぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさい。」


ぶつかったのは、俺より身長が少し低い女子高校生だった。

相手側も「ごめんなさい!」と謝ってきた。

そんなやり取りをし、トイレに行った。


「...あいつめっちゃカワええやん。」


そう、可愛かった。

トイレで用をすましている所で独り言を言った。

にしても可愛い。

いやもう、東京都とかにいるギャル系美人や、化粧つけて盛ってる美人とかではなく、まさに顔が幼い天然型美人だった。

「いや、もう出会い頭で女子高生とぶつかって、しかも可愛いJKって漫画の展開やん!(笑)」と自分の心でツッコミをいれた。

手を洗い、顔がにやけたまま教室へ戻った。


「こら!出席取るぞ。」


いきなり、ヤンキーみたいな口調で先生が号令を出した。


「起立、礼。」

「お願いします。」

「じゃあ早速だが、みんなからは自己紹介をしてもらうぞ。では、一番の天野さんか

らお願いな。」

「はい!こんにちは!私は天野...」


ここから自己紹介が続き、自分の番が来た。


「えー楠木 透と言います。先週、東京から引っ越してきました。まだ、静岡に慣れていないので、皆さんから色々と教えて貰ったら嬉しいです。一年間お願いします。」


自分の自己紹介が終わり、窓側の景色を見た。

その他の人の自己紹介は聞かなかった。

色々と引っ越しの手伝いなどで疲れて、眠かった。


自己紹介が続く。

そんな中、寝ようかと思ったが、ある言葉で目が覚めた。


「こんにちは!長倉 優香と言います!...」


「長 倉 優 香?あれ、どっかで聞いたことがあるような...いや、流石に気のせいだよね。」と窓側を向いたまま、心の中で思っていたがその時間も束の間、彼女の言葉からとんでもないことを言われた。


「透さんと元々同じ小学校で、今日奇跡的に再会できました。」


その時、バッと顔を上げ彼女を見た。

「は?」と感じながら見た瞬間、俺は口が開いたままになってしまった。

天地でもひっくり返ってるのかと思ったくらいだ。


そう、朝ぶつかった、あの幼い天然型美人だった。

流石にあり得ないと、そう現実を受け止められなかった。

自己紹介の時間が終わり休み時間がきた。

早速予想が的中した。

やはり、優香が話しかけてきた。


「透君久しぶり!小学生ぶりだね!元気にしてた。」

「...お、お久しぶりです。っていうか、お前本当にあの小学校の頃の優香なのか?」

「そうだよ?中学の時に引っ越して、イメチェンしたの(笑)。」

「あ...えっと...そうなん..だ。」


心の中では「ありえない」を連呼してた。

いや、だって、どう考えたってありえないでしょ。

小学校のころまではあんな陰キャっぽい髪型で、誰とも話さないあの子がいきなり可愛くなったなんて、そんなのイメージショックがおきるわ。

そして夢で見た、自称神様野郎の言葉を思い出した。


「いずれ一年以内に付き合う事は間違いないですわ。」


ここでなんとなく理解した。

夢ではなく現実なんだと。

これから忙しくなりそうだ。

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