神様からのお言葉は「いい加減付き合え!」だそうです

木長井 いつき

第1話 決まったもんはしょうがないです(笑)

 二礼二拍手


「今年こそ、彼女ができますように!」


 一礼

 今日は正月。

 毎年恒例の初詣に行った。


 しかし今年は、少し違う。

 毎年遠くまで行ってる護国神社ではなく、なんとなく今回は近くの神社にした。

 なぜかって?

 それは、来月東京から静岡へ高校入学の前に引っ越すからだ。


 それにしても懐かしい。

 この神社に来るのは小学生以来だ。

 そして良い記憶でもあり、悲しい記憶の場所でもある。

 懐かしいなぁ、あの頃の幼馴染達...

 いや、そんな事を正月に考える必要はない!


 そのあと、すぐに家に帰りおせちを食べた。

 昼になると、お父さんとお母さんは疲れていたからなのだろうか、みんな寝ていた。

 自分も疲れていた為、部屋に戻りベットで仮眠をしようとした。


 目が覚めた。


 しかし、見た事が無い景色が広がっていた。

 だが、少し馴染み深い感じもした。

 そこは神社の鳥居の場所に立っていたが、周りは濃い霧で覆われ、ただ怪しげな空間が広がっていた。

 鳥居の門を潜り、神社の拝殿の方に歩いた。

 賽銭箱の場所まで来てもう一度周りを見渡した。


 すると突然後ろから声が聞こえた。

 慌てて後ろを振り向くと、そこには成年らしき女性が立っていた。


 だが、ただの人では無いのはわかる。

 なぜなら、何故か巫女の着物をしているからだ。

 そして自分の横に立ち止まった。


「あれ?嘘!やったぁ!!久しぶりの賽銭だぁぁ!これで新しくアクセサリー買えるぞぉぉ!でも一体誰が...ん?」


の存在にやっと気付いた様子だった。


「あら、私が見えますの?」

「先から、巫女ではあるまじき言葉をポンスカ言ってる所から見えてるし、聞こえてます!」


 しれっとした顔で言ってやった。

「神職様というのに何を言ってるんだ。」と心の中で巫女を責めた。


「あら失礼ね!私は巫女などではございませぬのよ!何ゆえ私、ここの神様でございますのよ。」

「...最近流行ってる、vtuberの真似ですか?」

「違います!!正真正銘の神様ですのよ。」


 その自称神様を名乗ってる女は、意地でも自分を神様と言ってくるから一度試してみた。


「じゃあ証明してみてよ、神様って言う証拠。」

「いいわよ...あれ、でもどうやったら証明できるのかしら?」

「ほら、図星じゃん(笑)」


 鼻で笑ってやったら、自称神様が少しキレ気味の模様で俺に反論してきた。


「じゃあ!あなたが今日初詣に行った時の願い事を覗いてあげましょうか?」

「ちょっ、それはやらなくていい。」

「あら、なにか恥ずかしい事でもお願いしたのですか?(笑)」


 これはまずい。

 調子に乗って挑発したのが悪かった。

 あんな野郎に俺の願いごとなんて覗かれたら、もう死にたくなる。

 しかもあの自称神様野郎め、さっきからニヤけた顔で俺を見やがって。

 畜生。


「では、見ていきますわ。」


 終わった。

 何もかもが終わった。

 あんな野郎に俺は見られてしまうのか。

 あぁ、死にてぇ。


「今年こそ彼女ができますように?あら、まだまだお子ちゃまの願いですね。」

「はいはいそうですねぇ。」


 俺は何もかも悟った顔で上を向き、無感情で答えた。

 そして自称神様野郎は、賽銭箱を持ち上げ逆さまにしてガラガラと振回した。

 お金が落ちる音がする。


「それにしても、一体誰がこの賽銭箱にお金を入れてくれたのかしら?」


 俺はその言葉で我に帰った。


「あ、それ俺が入れた。」

「あら本当ですの?」


 そうしたら自称神様野郎は何か確認しだした。


「ふむふむ、確かにあなたが入れた賽銭のようですね。」

「そうだとさっきから言ってるじゃん。」

「それならしょうがありませんね。願い事を叶えてあげましょう。」


 その言葉に俺は釣られた。


「本当か。」


 自分は馬鹿でもあるため食いついてしまった。


「ええ、いくら馬鹿にされようともお礼はしないといけないですからね。」

「...神様?」

「そうですとも!私は神様ですよ!おっほほほ!」

「やっぱ、違うか。」

「神様です!」


 変なトークを始めたがすぐに終わり本題に入ってもらった。


「では、ルーレット形式で決めていきましょう。カモン!」

 そう言うと煙が出てきて、そこにはダーツ用のルーレット版が出てきた。


「この中には、小学校から中学生の同級生を対象にしたルーレットですわ。えーと、98分の1の確率であなたが付き合う人が決まりますわよ。」

「マジか!よかっ...ちょっと待って。じゃあ、自分が望む相手とは付き合えないと言う事ですか?」

「しょうがないですわ。これが決める時の規則ですのよ。」

「やっぱやめてくれ!」

「それは無理な願いですわ。お礼は必ずしないといけないのですから。」

「...やっぱ神様じゃない!ただの鬼畜だぁ!」


 そんな俺の言う事を耳にせず、ルーレットは始まりダーツ矢が放たれた。


「せめて、俺の出会った中で美人な奴にしてくれ!」と心の中で願った。

 矢は刺さり回転版が遅くなるのを待った。

 そして、回転は収まり結果を見るために近づいた。

 そこには、髪が目まで伸びている眼鏡女子に刺さっていた。

 落胆した。


「あら、お気の毒に。」


 自称神様野郎は励ましてくれているのだろうが俺からすると煽りにしか聞こえなくなってしまった。


 そして彼女の紹介をする。

 長倉 優香と言う人物だ。

 小学校の頃、何故かしら全学年全て同じ教室だった子だ。

「なんでよりによって、こんな奴と。」と思ったが一つ疑問が出た。


「あの、今度引っ越すから多分付き合えません。」

「そうなの?でも、いずれ一年以内に付き合う事は間違いないですわ。」


「そんなはずはない」と思った。

 すると突然視界がまたぼやけ始めた。


「あら、そろそろ時間ですわね。今回はこちらに来て下さりありがとうございます。また近々会うかもしれませんね。それではまた。」

「ちょい待って...」


 そして俺は目が覚めた。

 そうだった。

 自分は仮眠していた。

 そして俺は夢だと気づいた。

「なんだ夢かぁ。にしても、彼女欲しいなぁ。」

 俺はそう言い現実に戻った事を改めて感じた。

 そして時が経ち、静岡に引っ越してきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る