第12話 売買
訓練による影響で敏捷が3ポイント上昇する。
『
次の日は雨であった。
雨の日は少しだけ嫌な予感を覚える旧壱新多。
「旧壱さん、明日で退院ですね」
昏上逢が部屋の中に入って来て聞いて来る。
「うん、ようやくって感じだ、…今日は雨だから、流石に外でのトレーニングは難しいだろうし…読書でもしようか」
旧壱新多はそう言った。
流石に雨の日に、彼女を外に出して走れとは言い難い。
それに、雨の日は基本的にマイナスに働くイベントが多い。
その分、大幅に能力値を上昇してくれるイベントもあるが、今の彼女には必要のないものだろうと、旧壱新多は思った。
「(読書もまたトレーニングだしな、魔力のステータスが蓄えられるだろうし)」
そんな事を考えていた矢先だった。
病室をノックする音が聞こえて来る。
その音に対して、旧壱新多は「どうぞ」と声を掛けた。
「お邪魔しますよ」
そう言って部屋に入って来たのは、金色のビジネススーツを着込んだ七三分けの男だった。
「(成金ビジネスマンの金成だ)」
旧壱新多は渋い表情を浮かべる。
この男は、アイテムなどを売りつけるイベントの登場キャラクターだ。
「私、アイテム販売の金成です。お客様にぴったりの商品をお持ちしました」
そう言って、金成はバッグをベッドの上に置く。
旧壱新多は棚の中に入れておいた財布を取り出した。
「今日の商品は何があるんですか?」
そう聞くと、金成は指を振るってステータス画面を表示する。
「今回の商品はこちらとなります」
その内容を確認する旧壱新多。
『筋力増強剤』…攻撃が3ポイント上昇する薬。
販売価格:400万
『スキル強奪カード』…モンスターのスキルを吸収し、使用する事が出来るカード。
販売価格:3000万
『商人紹介状』…別のアイテム販売商人を呼ぶ事が出来る紹介状。
販売価格:5000万
『ランダム錠剤』…ステータスの何れかを10ポイント上昇し、ステータスの何れかを5ポイント低下させる。
販売価格:2000万
『七輝石のネックレス』全てのステータスに+補正を掛けるネックレス。
販売価格:1億5000万
「どちらに致しますか?」
純金で出来た歯を剥き出しにしながら、金成が聞いて来る。
旧壱新多は値段の方を見て溜息を吐いた。
「もっとマシなアイテムが欲しかったね」
「申し訳ありません、こちらは全て超高級品ですので、一流の人間ならば買って損は無い代物ですが…」
煽りを入れて来る金成。
旧壱新多は財布から千円を取り出して、昏上逢に渡す。
「悪いけど、飲み物を買ってきてくれないかい?…おつりで、売店で何か買うと良いよ」
「はい、分かりました…えっと、失礼します」
彼女を一旦、部屋から出す。
そして、旧壱新多は指を振るう。
「『生体プログラム』上のマネー売買は可能かな?」
旧壱新多の言葉に、金成は頷く。
「当然大丈夫です、それで、どれをお買い求めで?」
「んー…」
ステータス画面を開く。
生体プログラムとは、肉体に刻まれた電子情報である。
これが、ステータス情報の確認としての役割を担う。
「全部で」
生活情報の書かれたステータス画面から、金成に渡す。
約1億を超える金額が、金成の方へ渡された。
「お買い上げありがとうございます」
にこやかな笑みを浮かべる金成。
旧壱新多はもう少し上等な代物が欲しかったと溜息を吐いた。
『シルバーバレット』 LV.07
筋力増強剤で攻撃が3上昇。
七輝石の効果で全てのステータスに+補正。
ランダム錠剤で防御が5低下し、器量が10上昇した。
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