第12話 売買

訓練による影響で敏捷が3ポイント上昇する。

敏捷クイック』/C+(34)→C+(37)


次の日は雨であった。

雨の日は少しだけ嫌な予感を覚える旧壱新多。


「旧壱さん、明日で退院ですね」


昏上逢が部屋の中に入って来て聞いて来る。


「うん、ようやくって感じだ、…今日は雨だから、流石に外でのトレーニングは難しいだろうし…読書でもしようか」


旧壱新多はそう言った。

流石に雨の日に、彼女を外に出して走れとは言い難い。

それに、雨の日は基本的にマイナスに働くイベントが多い。

その分、大幅に能力値を上昇してくれるイベントもあるが、今の彼女には必要のないものだろうと、旧壱新多は思った。


「(読書もまたトレーニングだしな、魔力のステータスが蓄えられるだろうし)」


そんな事を考えていた矢先だった。

病室をノックする音が聞こえて来る。

その音に対して、旧壱新多は「どうぞ」と声を掛けた。


「お邪魔しますよ」


そう言って部屋に入って来たのは、金色のビジネススーツを着込んだ七三分けの男だった。


「(成金ビジネスマンの金成だ)」


旧壱新多は渋い表情を浮かべる。

この男は、アイテムなどを売りつけるイベントの登場キャラクターだ。


「私、アイテム販売の金成です。お客様にぴったりの商品をお持ちしました」


そう言って、金成はバッグをベッドの上に置く。

旧壱新多は棚の中に入れておいた財布を取り出した。


「今日の商品は何があるんですか?」


そう聞くと、金成は指を振るってステータス画面を表示する。


「今回の商品はこちらとなります」


その内容を確認する旧壱新多。


『筋力増強剤』…攻撃が3ポイント上昇する薬。

販売価格:400万


『スキル強奪カード』…モンスターのスキルを吸収し、使用する事が出来るカード。

販売価格:3000万


『商人紹介状』…別のアイテム販売商人を呼ぶ事が出来る紹介状。

販売価格:5000万


『ランダム錠剤』…ステータスの何れかを10ポイント上昇し、ステータスの何れかを5ポイント低下させる。

販売価格:2000万


『七輝石のネックレス』全てのステータスに+補正を掛けるネックレス。

販売価格:1億5000万



「どちらに致しますか?」


純金で出来た歯を剥き出しにしながら、金成が聞いて来る。

旧壱新多は値段の方を見て溜息を吐いた。


「もっとマシなアイテムが欲しかったね」


「申し訳ありません、こちらは全て超高級品ですので、一流の人間ならば買って損は無い代物ですが…」


煽りを入れて来る金成。

旧壱新多は財布から千円を取り出して、昏上逢に渡す。


「悪いけど、飲み物を買ってきてくれないかい?…おつりで、売店で何か買うと良いよ」


「はい、分かりました…えっと、失礼します」


彼女を一旦、部屋から出す。

そして、旧壱新多は指を振るう。


「『生体プログラム』上のマネー売買は可能かな?」


旧壱新多の言葉に、金成は頷く。


「当然大丈夫です、それで、どれをお買い求めで?」


「んー…」


ステータス画面を開く。

生体プログラムとは、肉体に刻まれた電子情報である。

これが、ステータス情報の確認としての役割を担う。


「全部で」


生活情報の書かれたステータス画面から、金成に渡す。

約1億を超える金額が、金成の方へ渡された。


「お買い上げありがとうございます」


にこやかな笑みを浮かべる金成。

旧壱新多はもう少し上等な代物が欲しかったと溜息を吐いた。




『シルバーバレット』 LV.07

攻撃アタック/D+(20)→D++(23)

防御ブロック/D(16)→D+(11)

敏捷クイック/C+(34)→C+(37)

器量スペック/D(15)→C+(25)

魔力マジック/C(21)→C+(21)


筋力増強剤で攻撃が3上昇。

七輝石の効果で全てのステータスに+補正。

ランダム錠剤で防御が5低下し、器量が10上昇した。

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