第6話 入院

次に目が覚めた時。

旧壱新多は病院に居た。

あの後、旧壱新多はシルバーバレットに連れられてダンジョンを脱出。

その後、近くに点在していたシーカーによって病院へと移送された。


「(少しやり過ぎたかな)」


手術を受けた旧壱新多は自らの腹部に手を添える。

彼の腹部は傷ついていた。鋭利とも言い難い、岩石の破片で横腹を切られていた。

それは、モンスターが攻撃して出来た傷ではない。

旧壱新多が、自ら岩石の破片を使って横腹を斬ったのだ。


「(焦燥と苦痛の演技は実際に受けた方が早かった、それに、彼女に疲弊があると言った手前、ただ病院に行って診断を受ければ正常である事が分かる、なら、実際に腹を裂いた方が早かった)」


腹部は縫われていて、鎮痛剤も服用されている為に、軽い違和感しか感じない。

そんな状態で、旧壱新多は指を振るいステータス画面を開く。


『シルバーバレット』 LV.03→LV.07

攻撃アタック/D(10)

防御ブロック/E(06)

敏捷クイック/D(17)

器量スペック/E(05)

魔力マジック/D(11)


『職業』

/銃使いの魔法少女

『スキル』

/『秒読み取りカウントタップ

ランク:E

分類:予知系

説明:結末までの秒数を認識出来る

『魔装杖』

/『バレルブレイズ・ロッククシューター』

銃火器の魔装杖。

ライフルの様に長いロングバレルが特徴的。


『ステータスポイントが4つ取得されました』

『新しいスキルを所得しました』

『「銃火帰巣性ワイパーアーツ」を取得しました』

『スキル所持上限に達成しました』


レベルが一気に4も上昇している。

同時に、彼女のスキルも取得されていた。


「(スキル上限に達成した、か。器量のランクならスキルは二つ所持可能だからな…レベルが5上がる度にスキルが一つ取得出来る、それまでに器量を上げて置くか…いや、数日程、レベル上げは止めて置いて訓練に徹するか…イベントも一日一回はあるし、器量を上げるか、アイテムが来るのを待つか…)」


そんな事を考えながら、ステータスの振り分けをどうするか考える旧壱新多。

病室を開けて来て、カーテンの前に立つ人影を見つける。

そのフォルムから、シルバーバレットだと彼は確信した。


「あの、旧壱さん」


カーテン越しから声を掛けられる。

旧壱新多はステータス画面を閉ざすと眼を擦りながら寝起きの様な声を漏らす。


「あ…あぁ…シルバーバレット」


「お見舞いに来ました」


カーテンを開けると、未だに魔法少女姿であるシルバーバレットの姿があった。


「ありがとう…来てくれたんだ」


「はい、調子はどうですか?」


彼女の言葉に、旧壱新多は儚く笑みを浮かべた。


「ちょっとだけ、悪いかな…ははッ」


「あの、私に出来る事があったら、遠慮なく言ってください」


シルバーバレットはそう言って椅子に座る。

旧壱新多は「遠慮なく、か」と意味深に呟いて。

目を伏せる、そして、彼女の方に向いて演技を始めた。


「じゃあ…シルバーバレット、…魔法少女は、もう終わらせよう」


「え?」


彼の言葉に、シルバーバレットの表情は引き攣っている。

旧壱新多の言葉を飲み込めないでいた。

暗い表情をしている旧壱新多は、彼女の顔に気が付いて明るい笑みを浮かべる。


「あ…ごめん。魔力が足りないワケじゃないんだ。病院だと栄養剤も置いてあるし、キミの本来の肉体が回復するまでは、魔法少女として居られるよ、けど…」


再び暗い表情を浮かべる旧壱新多。


「育成する能力は、必然的に戦闘をせざるを得ない。前日のダンジョンを見る限り、キミは争い毎に向いてないと思ったんだ…俺は、出来る事なら、女の子を危ない場所に連れて行きたくはない…、だから、キミの体が治るまでは、俺がなんとか魔力を維持するから、其処は安心して欲しい」


彼女の安全は保障すると旧壱新多は告げる。

ダンジョンはシーカー以外は入れない。

だが、旧壱新多は資格を持っている為に侵入が可能だ。

シーカーの管轄下であれば、一般人も活動出来る。


シルバーバレットは自らの腕を擦る。

表情は暗くて、生きる希望を見失った様な喪失感が見受けられた。


「…私は、構いません」


言葉が漏れる。

魔法少女で居たいと言う彼女の言葉が、確かに旧壱新多の耳に届いた。


「…駄目だ、俺がキミを魔法少女にしたのは、あくまでもダンジョンを抜け出すと言う名目があったからだ。俺は、其処から抜け出す為に、キミを利用したんだよ?悪い人間だ。親御さんにどう説明したらいい?」


自分を卑下して印象を下げる素振り。

しかし、それは計算だ。自分を信頼しているであろう彼女は、その卑下を許さない。


「私は…構いません、それに、きっと、父さんは許してくれます…父さんはダンジョンの管理関係者で、身内から、シーカーが出るのを夢見ていますから…」


「それでも心配する。親御さんも、俺だって…キミを危険な目に遭わせたくない」


大切だから、とは言わなかった。

言わなくても、彼女は自然とそう受け取ってしまうだろう。


「じゃあ…じゃあ、強くしてください、旧壱さんの能力は…育成する能力、なんですよね?私の事を、心配にならないくらいに、強くしてください…お願いします、私は、もっと…」


難しい表情を浮かべる。

口元を手で隠して、旧壱新多は悩むふりをした。

内心では、毒蛇の様に舌先を出している。


「…確か、試験があったっけ?」


「え?」


旧壱新多は壁に貼り付けられた病院のカレンダーを見詰める。


「半月に一度、シーカーの試験がある…試験に合格してシーカーになれたら、親御さんも、俺も、納得しよう」


「…じゃあ」


「だからと言って、モンスターとの戦闘は避ける。レベルを上げる為には、モンスターと戦わないといけないからな。…半月までに、キミを鍛える。それまで、俺がサポートをしよう」


そう約束した。

シルバーバレットは、嬉しそうな表情を浮かべて、頭を下げた。


「私、頑張ります…」


「俺も頑張るつもりだ。半月後まで、一緒に頑張ろう」


そうして、旧壱新多とシルバーバレットは、シーカーを目指す事になった。

旧壱新多は、想定通りと言いたげに、ステータス画面を操作する。


『シルバーバレット』 LV.07

攻撃アタック/D(10)

防御ブロック/E(06)

敏捷クイック/D(17)→C(21)

器量スペック/E(05)

魔力マジック/D(11)


『職業』

/銃使いの魔法少女

『スキル』

/『秒読み取りカウントタップ

ランク:E

分類:予知系

説明:結末までの秒数を認識出来る

/『銃火帰巣性ワイパーアーツ

分類:操作系

説明:銃器から射出した弾丸の軌道を操作する。

『魔装杖』

/『バレルブレイズ・ロッククシューター』

銃火器の魔装杖。

ライフルの様に長いロングバレルが特徴的。



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