第4話  君を知る

 気分も良くなったところで俺は保健室を出て、教室に入室するための許可書を職員室に取りに行った。職員室では先生たちがワイワイガヤガヤ喋っていて楽しそうな雰囲気が漂う。新年度初日というのは教師にとっても喜ばしいことなのかもしれない。

 それは置いといて……。俺は新年度初日早々に黒歴史を作ってしまった。女の子に話しかけられただけで気絶するやつなんて、からかわれ対象になりかねない。ここはビシッと堂々と。


「あ、矢島やじまくん!」


 教室に入ると海来さんが俺をこっちこっちと手招きする。それを周りの男子は横目で羨ましそうにチラリ。

 気にせず凛々しく席に座ると海来みくるさんが言う。


「体調治った?」

「あ、うん!お陰様で。それで、そのぉ……」

「大丈夫!!矢島くんが女の子に話しかけられて気絶したことは誰にも言わないよ」

「ち、ちがうって!!」


 か、からかわれた。海来さんはクスクス笑いながら口を手で抑える。

 悔しい。でも、タネを撒いたのは自分なのであまり言い返せない。


「やっぱり矢島くんって面白い!」

「そ、そんなこと……ない」

「ごめんね。からかい過ぎちゃった」

「いや、大丈夫!」


 あぁ、帰ってゲームしたりダラダラとアニメ観て癒やされたい。こんな羞恥な日になるだなんて思ってもいなかった。さっき保健室で寝てる時まではこんなにも悔しくなかったし、むしろ美少女と話せてむちゃくちゃ嬉しかったのに。


「はぁ……」

「ほぉ。ため息ついてどうしたの?」

「いや、別に!! ただ、水忘れたとかそういうので」

「ふーん。てっきり、私にからかわれて悔しがってるのかなぁって」


 う、なんて鋭い……。

 まさか俺の心の声は意識していないだけで口から漏れているのか? でもそんなはずは……。


「矢島くんは結構思ってることが顔に出るから、何考えてるかわかりやすいね!あははははっ」

「うぅ……」


 もっとお淑やかで、優しくて、可愛げのある女の子だと期待していたのに……。会ったばかりの女の子にここまでズタボロに心をえぐられるなんて。海来さん恐るべし。


「矢島くんのことからかったり話したりするのすごく楽しいからこれからよろしくね!!」

「からかったりは余計なのでは??」


 この先これが毎日続くと思うと少しテンションが下がった。

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