第3話 夢の中で
「ん?……」
「クススッ……」
美少女が、隣で笑っている!!??せ、世紀の大事件だ!!俺のことを見て美少女が笑っている!?
「
「え……」
ま、また会話してしまった!! 俺みたいな陰キャ男子がこんなに可愛い女の子と話してもいいのか! これは日本国憲法のなんたらかんたらで重罪になったり、セクシーなおねえさんに縄で縛られたりはしないのだろうか……。
「いや、消しゴム拾ってくれたのに怒られちゃったから悪いなぁって……。ありがとう」
「い、いやぁ〜」
まだ一日目なのに、展開が早すぎて頭が真っ白になった。
そして戸惑っている俺を見て彼女はまた笑いながら言った。
「矢島くん、今日から私の友達ね!」
何を言われたか理解した瞬間、体がとても熱くなって頭もクラクラしだした。
そして目眩が始まり、視界が少しずつ狭まっていって全身の力が抜けていくような感覚がする。
あ、やばい……。
俺、多分ここで死ぬんだ。新天地で美少女と話したのを最後に、幸せな気持ちのまま安らかに眠るんだ……。
そんなことを考えている間に周りの雑音は全く聞こえなくなって、微かに聞こえる一音に気がつく。
「おーい」
「ん?」
「おい」
「おい」と呼びかけてくるその声は大きくなっていって。瞬きした瞬間、目の前には白いひげを生やし、体が鮮やかに発光した姿のおじいさんが立っていた。
俺は目を丸くして固まり、一歩後ろに下がる。
「警戒せんでよろしい」
「だ、だれですか??」
「わしの名前はアウストロ、ルカミエル、カリストウリエル、ロザルリン・アマーレ、ロマーリオだ」
「いや名前、長!!」
「それじゃぁ、省略して神様とでも呼んでおくれ」
目の前にいる自称『神様』は神様っぽい杖や服を着ているわけでもなく、見た目は髭の長い発光するただの爺さん。それに日本語を喋っているのに名前は外国人みたいにカタカナばかり。俺はこの謎めいた状況に、ここが地獄なんだと思い込み気が遠くなった。
「じゃぁ、本題なんじゃが。お主にはある女の子を救ってもらいたい」
「え??・・・」
「その女の子はこれからお主ととても良い関係になるであろう。じゃが、彼女は心の奥深くに深い悲しみを眠らせておる。じゃから君が彼女の氷を溶かしていってほしいのじゃ」
「なんで俺がそんなこと……」
「それは君にしかできないからじゃ。それに人が良いことをすると徳を積むことができるから、君にも良いことがあるかもじゃよ」
神様はそう言うと暗闇の中にゆっくり消えていった。見えなくなったところでまた周囲は真っ暗。そして瞬きをする。
◆
「矢島くん? 起きた……」
「うぅーん、ん」
目を覚ますと隣にはさっきの美少女がいて、俺は寝そべっている状態だった。
左右に首を振ってキョロキョロ確認するも、髭の長い発光じいさんはいない。
「そっか……。ただの夢」
「ん?」
「いや何でも」
改めて近くで見るが彼女はむちゃくちゃ可愛いハイスペック美少女。中学の時クラスにいたケバケバな化粧の濃い女子とは違ういい香りが鼻孔を
「なんで俺はここにいるんでしたっけ?」
「矢島くんね。私が話しかけたら急に倒れちゃって。だからここまで私が運んできたんだよ? 覚えてないかぁ……」
少し残念そうにしながら椅子から足を伸ばして片方のスリッパともう片方のスリッパをこすり合わせる美少女。顔が熱くなるのを感じて思わず下を向く。
「それで……そのぉ」
「あぁ!名前言ってなかったね!!私は
「あ、うん。それで水橋さん……」
「えぇ!!海来って呼んでくれよぉ〜」
「じゃぁ、海来さん?」
そう呼ぶと嬉しそうにニコッと答える海来。
そんなに名前呼びが嬉しかったのだろうかと思うとタイミングよく海来が言う。
「さんずけだと少しお姉さんみたいだなぁーって思って」
そう海来が言い終わると同時に授業開始の予鈴が鳴る。
「そろそろ行かないと!それじゃあゆっくり休んで!」
「あ、うん!ありがと」
そして彼女はそそくさと保健室を出て行った。
まさかこれほどまでに会話ができるとは……。
その時にはもう、恵の頭からは夢の中であった神様との話は忘れさられていた。
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