第2話  友達

 ホームルームの後の始業式が終わり、一人で教室に帰ってくると、やはり俺の席の隣には、あの美少女が座っていた。

 全員が着席し、先生の合図で休み時間が始まるとみんな席をたってガヤガヤ話始める。でもまだ同じ中学校の生徒ばかりで集まって話すようで、みんな少し声を小さくして喋っているようにも思える。


 隣の席の彼女を見ると、周りには身長の低い女の子が一人。少人数ではあるものの、二人は楽しそうに話をしていた。


 そして改めて、黒髪ロングで清楚な彼女は、光の反射と絶妙な角度で宝石のように輝いて見える。これぞまさに天使。近づくことさえ罪のような気がして、彼女とその友達の周りだけ別世界のような空気が漂っていた。


「おいめぐみ!!」

「ん??」


 隣の席をバレないようにチラチラ見ていた俺に元気よく話しかけてきたのは、中学からの親友のまさるだ。そして、その隣には知らない男の子が一人。


「恵は新しい友達できたか? 俺はもうできたけどよ」

「そうか、よかったな。俺はまだ。その子がその友達?」

「そうそう、前葉まえばくんっていって、趣味は三度の飯とJK鑑賞だ」

「か、変わった趣味だな……」


 そういうと前葉くんは恥ずかしそうに首を振り、優の腕を緩く叩く。


「じぇ、JK鑑賞はたまにしかしてないんで……。安心してください。あと、友達になれたら嬉しいです」

「うん!別にタメ口で大丈夫!俺は矢島恵。よろしく!」


『いや、たまにJK鑑賞してるんかいー!!』ってツッコミたかったけど、流石に初対面で失礼かなと思ったので我慢。

 それと、ほんと優のコミュ力には尊敬する。前からコミュ障だった俺にも、優は初めて会った時からすごく優しく接してくれた。これは俺にはない良き才能だと思うし、とても羨ましい。


 こいつはやっぱり、見た目がぽっちゃりでも俺とは違ってすぐに彼女ができるような特別な奴なんだろうなってたまに思ってしまう。そうなるとやっぱり自分のことを少しだけ惨めだなぁと感じてしまうことがある。


「それで、美少女の隣の席はどうだ?」

「いや、まだホームルームと始業式しかしてないし」

「それでその子の名前は?」

「いや、知らない」

「まだ話しかけてもないのかよ!!?」


 だってあんな神聖な領域に、こんな目立たない、イケメンでもない、ただの陰キャでしかない俺が近づいたら骨の髄まで溶けてしまいそうだし、場違いだろうし……。


「まぁ、クヨクヨせず頑張れよ!!早く仲良くなって俺に紹介しろ」

「仲良くなっても紹介なんかするか!」


 話が一段落ついたところで優と前葉くんは席へと帰って行き、一息ついたところでチャイムが鳴る。中学校とは違って少し音が高めのチャイムは新鮮味があっていい。

 春ということもあってか隣からは涼しい風と鼻を幸せにするフレグランスがぁ……。ん?!?


 いい香りの源にはやはり美少女。キツすぎず弱すぎず、爽快な気持ちになる。


 あぁ、一生この席のままでいいのに……。


 ポトッ……。


「あ、はい」

「ありがとう……」


 小さな音は消しゴムが床に落ちた音。チャンスだと思い拾って渡すと『ありがとう』。俺はなんて幸せ者なんだぁぁあああ!!!!!


「矢島!!何、白目向いてニヤついてるんだ!!」

「す、すみません!!」


 喜びにゆっくり浸る時間もなく、先生にクラスで初めて怒られた。

 一番乗りの説教に恥ずかしくなって下を向く俺。


「クススッ……」

「ん?……」

「クススッ……」


 美少女が、隣で笑っている!!??










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