第9話 別れの寂しさよりも再開の驚き

「ていう経緯で私達はシェルに会ったの」


「ちょっと待ってもらっていい?少し整理するから」


 まとめるとこうだ。


 お姉様とチャルドちゃんは姉さんに頼まれて俺が王都に来るまでに迷ったりしないか、見守っておくようにと言われたらしい。


 だけども俺が変な人に絡まれていたために、お姉様が俺に早く関わった。

 本当は最後まで出会うことはなく終わるはずだったらしいが、お姉様は我慢できなかったらしい。


 良かった、お姉様の優しさは仕組まれたものじゃなかったんだ!

 俺、どこまで騙されてるのか不安だったんだよ…まじで。


 あれ?でも今回俺が弟にこんなことされるの知ってたってこと?それと男だったと最初からバレて立ってこと?俺の不安は何だった?


 ま、まぁそれはいい。

 姉さんならば知っていても不思議はないし、不安も俺が勝手に抱いたものだし。


 …納得は出来ないけど。


「お姉様達と出会った経緯はわかった、姉さんとの関係は聞いても良い?」


「それは私から説明するね!」


 心底申し訳なさそうなお姉様とチャルドちゃんに変わり、姉さんが説明を変わる。


「ネルロちゃんは元暗殺者でね?私を殺しに来たところを保護したの、チャルドちゃんは孤児で、ネルロちゃんが助けてあげたの。わかった?」


 え?お姉様が暗殺者?あんなに優しいのに?向いてなくない?絶対に。


「お姉様が暗殺者って…」


「元々は父親に無理やりさせられてたらしいよ?今は殆ど無いけどちょっと前は裏切り者として狙われたりもしてたらしいし」


 姉さんはなるべく雰囲気が暗くならないよう、笑顔で明るく話す。


「そういう…」


 無理やりって…酷いな、それに実の娘の命を狙うとかさぁ。

 今はもうなくなったみたいだけど、姉さんが頑張ったんだろうなぁ。


 チャルドちゃんは孤児、親を亡くしたのか…。

 ふぅ、あまり踏み込むのも良くない気がするし、ここはやめとこう。


「ありがとう姉さん、理解できたよ」


「良かった!私も聞きたいことがあるんだけどね?何でシェルくんはネルロちゃんのことをお姉様って呼んでるの?」


 おちゃらけたように、それでいてほんとに不思議そうに聞いてくる姉さん。

 それに対して俺は、当然のことのように返す。


「え?そりゃあお姉様だからだよ、当たり前じゃん」


「あ、うん…そっか」


      ☆


 俺が姉さんの家についてから一月ほどがたった。

 それまでは毎日、寝る時間になると黙って俺のベットに潜り込んできていた姉さんが喋りだす。


「シェルくん、私ね?明日からちょっと遠くに行かなきゃいけないの…だからシェルくんとしばらく会えなくなっちゃうんだ」


 泣きそうになりながら話かけてくる姉さん、その姿は心底悲しそうで。

 いつ仕事辞めると言い出してしまうのか不安になるほどだ。


 もしかして数ヶ月会えなくなるのでは?そう思い期間を聞いて見る。


「へ〜、どのくらい?」


「半日」


「え?」


 返って来た答えは半日、今までは殆ど一日中家に居たので離れることはなかったがしかし。

 半日だけ?それでこんなにも今生の別れのような悲しみ方するの?そう思ってしまってポロッと口からこぼれてしまう。


「え?たった半日だけ?」


「シェルくん酷い!私はこんなにも悲しいのにぃ!そんなたった半日何て言い方するなんて…私泣くよ?」


 夜中なのにも関わらず大声で抗議してくる姉さん。

 完全に涙目になりながら“私は悲しいです!“と必死に伝えてくる。


 その姿に心配したのが急に馬鹿らしくなって、俺は少し冷たく言った。


「ちょっとうるさい」


「だってぇ〜…!」

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