第8話 姉さんは心配性
なんて一言文句を言って、その場から立ち去ろうとしたところで遠くから大きな声が近づいてくる。
「シェルくぅ〜ん!!会いたかったよぉ!!」
門の反対側から超スピードで走って来るのは長身でローブを被った女性。
おそらく姉さんだ、あんなにも叫びながら全速力で、髪を振乱しながら走ってこられると少し引いてしまうが。
かなり長い間離れていたのにこの程度で済んでいるのには多少の成長を感じることができた。
「ずっと会えなくて寂しかったんだよぉ〜?でもシェルくんから会いに来てくれるなんて私とっても嬉しぃよう!」
そのままのスピードで飛びつかれ、抱きしめられ、かなりの力が加わったことにより俺の体は後ろに倒れてしまう。
そうすると当然俺が押し倒される構図になるので、姉さんのたわわに実ったものに押しつぶされてしまう。
「姉さん苦しい」
「あっ!ごめんなさい、別に悪意はなかったんだよ?私はただシェルくんに会えたのが嬉しかっただけで…」
先程俺を通してくれなかった門番は、幻でも見ているんじゃないか?これは夢なんじゃないか?と大いに困惑。
何度も目を閉じ、俺達のことを見つめている。
「姉さん、疲れたしお風呂入りたい」
「わかった!家(うち)にあるから行こ?シェルくんがいつ来ても良いように部屋も用意してるんだ♪」
俺の腕に抱いたまま移動する姉さん、とても嬉しそうで何よりである。
が、もう少し頻繁に会いに来たほうが良かったかもしれないと後悔をしている今日この頃。
☆
姉さんの家の前まで来たが圧巻、俺の住んでた家よりも大きく、豪華な外装は姉さんの富を象徴しているかのようで。
庭だけでもいくつか家が建つのではと思えるほどに広い。
「姉さんってこんなにも儲かってるの?」
「え?そこまでだよ?あ!でもシェルくんのことを一生養ってあげられるくらいなら稼げてるよ!」
るんるんととても嬉しそうな姉さんは上目遣いで“どう?“と聞いてくるが悪くない。
姉さんに養って貰えば働かなくても良くなるのか…そう悪い考えが浮かんでくる。
「まぁシェルくんが生きたいように生きるのが一番だから好きにしていいんだよ♪」
姉さんに続き家の敷地に入り、庭を見渡すとそこは綺麗に装飾された草花で埋め尽くされている。
「これは姉さんが?」
「違うよ、お友達にやってもらってるの」
楽しそうに話す姉さんに友達がいることに少し驚く。
が姉さんが自分で庭を綺麗にするよりは自然だなと思い直す。
「まぁそうか、姉さんがこんなことするはずないもんな」
「ふふふ、私も女の子なんだぞ〜?」
そう笑いながら姉さんは家の扉を開ける。
「ただいまー!」
そう叫びながら勢い良く開かれた扉の先、そこには、
「おかえりなさい、フィネル様、シェル」
「…おかえり、フィネル、シェル」
「ミネルちゃんとチャルドちゃんもお帰りー」
嬉しそうに姉さんと俺を迎え入れるお姉様と、何とも言えない顔で迎えてくれるチャルドちゃんがいた。
「え?何で?」
「もー、そこはただいまって言うところだよ?」
さっき別れたはずのお姉様とチャルドちゃんがいる、そしてお姉様が姉さんを様付けでよんでいる。
困惑した頭はこの情報を処理し切ることはできず、ショートして固まってしまい。
また同じ言葉を繰り返す。
「え?何で?」
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