第6話 欲は良くてもくよくよしない

「今回ので貴方は一人でも全く問題ないとわかったことだし、この後はどうするの?」


 お姉様とチャルドちゃんは初任務を終えた俺へのお祝いとして、少しお高めのお店に連れて行ってくれた。

 そこで食事をしているところお姉様がこの先についての話を始める。


「このまま私達と一緒にいてもいいし、当初の予定通り一人で活動してくれても良いわよ。チャルドもいいわよね?」


「別にどっちでもいい」


「ふふ、あれでもチャルドは貴方に懐いてるのよ?凄く人見知りなのにあんなにも楽しそうにして…嬉しいわ」


「そうなんですねぇ」


 この先どうするのか…それは問題だ。

 選択肢としてはこの先もお姉様達にお世話になるものと、姉のところに行くという2つ。


 お姉様はこう言ってくれているとしても流石にこの先もお姉様達に迷惑をかけ続けるのは気が進まない。

 俺にも一応罪悪感というのはあるので、今のところ全く利益にはなれず不利益にしかなっていないことは理解している。


 今回の依頼の報酬のうちから銀貨2枚を返して、ここで離脱というのが一番だろう。


「自分には目的地があるので、ここで離脱をさせてもらおうかと」


「あら、そうなの…?ちなみにどこへ?」


 俺が離脱すると伝えると少し悲しそうな顔をし、あっ!となにかを思い出したかのように目的地を聞いてくる。


「姉のいる王都の方にですかね」


「ん、それなら私達も同じ。一緒に行く?」


 チャルドちゃんはちょっとだけ嬉しそうに“一緒に行ってやらんこともない“と言ってくれる、可愛い。


「え?お姉様達も王都に?」


「ええ、いつもは王都で活動しているんだけど、護衛依頼でこっちまで来てたのよ」


「結構転々としてる、でも拠点は王都」


「そうなんですね」


 なんの因果か、お姉様達と目的地は同じだったらしい。

 これならもう少しだけ一緒にいられるかも知れない、それに一人で王都まで行くよりも暇はしないだろう。


「俺も一緒に王都まで行かせてもらっても…?」


「ええ、喜んで」


「ん」


「ありがとうございます!」


 これにより目的地は王都に決まり、俺達の新たな冒険が始まった。


      ☆


 王都へ行くために街を出て2日、野宿続きでご飯も保存食オンリー。

 少し水準が落ちる生活には嫌気がさす…という訳でもない。


 野宿なので寝床はお姉様とチャルドちゃんと一緒、とてもウハウハな気分で毎夜を過ごしている。

 そして今日、なんとチャルドちゃんがとても心を開いてくれて距離が近い。


 移動のときもほんのりと人肌の暖かさを感じる距離感で動き、幸せな昼を過ごした。


 そして夜、お姉様とチャルドちゃんに挟まれてとても幸せな柔らかさを左右に感じながら過ごしている。


 しかし別に興奮をするわけでもなく、可愛いなぁと癒やされる程度。


 もしかすると精神も肉体側に引きずられているのか…?

 そう心配になったのだが、元々こうだったということをすぐに思い出し冷静になる。


 二人のこの無防備さは同性という共通点から来ているものなのだろう。

 だから襲ってしまいたいなどとトチ狂ったことを考えるような精神状態ではないことに感謝をした。


 しかし俺は、初めての友達を失ってしまうかもしれないという恐怖に怯えながら、これからの数日間を過ごすという恐ろしさと。

 ともに楽しい時間を過ごせるという喜びで寝られなくなってしまった。

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