第3話 男のロマン

「何で!?何で駄目なの!?俺もう成人してるって!大人だって!働かせてよ、食いっぱぐれるよぉぉ!!!やだやだ野宿とか無理ぃ!」


「き、規則ですので…」


 俺は最初から生活の道を閉ざされようとしていた…。

 ところで何でこうなってると思う?実はね?


      ☆


「ここが冒険者ギルドか、男ばっかりだなぁ」


 中に入るとそこはむさ苦しい男の楽園。

 筋肉もりもりのいかにも前線張ってます!って感じの人や、細身のいかにも後ろの方で魔法使ってます!って感じの人。


 様々な種類の戦士がいてとても良い、雰囲気が良い。

 まさに思い描いていた通りでとてもワクワクが止まらない。

 ここでなら働くのも楽しみかも知れない。


 そしてだよ?受付を見ると美女ばかり。

 これからあの人達に優しく迎え入れられるのだと思うとドキドキが止まらない。


「ヤッベ、冒険者ギルド最高かよ」


 そのドキドキのまま俺は堂々と歩いて行く、そして意を決していざゆかん!

「すいません、登録お願いします」


「わかりました、年齢と名前、そして職業を教えて下さい」


 子供を見る優しそうな眼差しと可愛らしい笑顔で質問をされる俺。

 やはりとても優しく迎え入れてもらえている!そう喜ばざるをえない。


「シェルドール、21歳です!ニートだけど一応魔法使いやってます」


 元気な俺の返答を聞いて、受付のきれいなお姉さんは俺の顔をチラっと見て少し悩む、そしてまたチラッと見て少し悩むを繰り返す。


 俺は嘘一つなくすべての問に完璧に答えたはず…なのに何だこの間は?気まずい、無言の時間が気まずい。


 そしてしばし気まずい空気のまま待っていると、お姉さんはその重苦しい空気を切り裂くような満面の笑顔でようやく喋りだす。


「未成年の方は一人で登録することは出来ません、最低でも一人は仲間の人を連れてきてください」


 受付のお姉さんは整った可愛らしい笑顔で、無情にもはっきりと伝えてくる。

 お前じゃ働けねぇよ、と。


      ☆


 そして今に至るってわけだね!


「頼むよぉ“ぉ“!!金がないんだよ!少しだけ、少しだけでいいから入れてよ!我慢できないの!もう我慢できないの!お腹の底がキュンキュンしてるのぉぉ!!空腹により胃液の分泌量が凄過ぎてキリキリ痛むの!!!」


 顔面を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにし、みっともなく大口を開き叫びまくる。

 俺は恥なんて捨てた、プライドなんて燃やした、ニートになったその日から泥水啜る覚悟は決めてある!!


 さぁどうだ、ここまでされたら流石に同情して…


「無理です…」


 くれてないね。

 クッソマニュアル人間め!親の定めたレールから脱線した俺を見習ってお姉さんもマニュアルから外れてよ!!

 あ、でも俺を見習ったらお姉さんは職を失うか!はっはっはっはっは!!


「はぁ…どうしよ」


 流していた涙を止め、大きく開けていた口は閉じ、俺はスンッと無表情になる。


 するとお姉さんは恐ろしいものでも見るかのような目で見てくる。


「あ、え?全部…嘘?」


 そんな弱々しい呟きは無視して俺も独り呟く。


「金ないし、職ないし、家ないし、食ないし、何もない」


「ねぇ貴方、さっきの変な娘よね?どうしたの?また困りごと?」


 俺が絶望に染まっていると聞き覚えのある声が聞こえた。


「お姉…様?」


「なれないわねその呼び方、でもそうよ」


 困惑しながらも天使のような笑顔、やっぱりお姉様だ!やはり俺を救う天使だったか、いや救世の女神だったか。


 俺は少々の申し訳無さを感じながらもお姉様に縋り付いた。

 そして一言。


「俺の保護者になってください」

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