第3話「友人の誘い」
「で、なんとか事務的な手続きは終わった。
役所の手続きは割と簡単にどうにかできたが、銀行とかマジ大変だったからな……」
「さすが隼也。仕事が早いね」
碧が目覚めてから4日目。昼前に碧の宿泊しているホテルの一室に足を運んだ隼也は、ベッドで何かを改造して遊ぶ碧に出迎えられた。
そして、簡単に碧が現状どうなったかの説明をする。
「手続き上の問題で、お前は一時的に俺の養子みたいなものにさせてもらった。まぁ、成人するまでの間だけどな」
「お
「やめろ、虫唾が走る」
「冗談だよ。僕も呼びたくないもん。
そういえば、僕の持ってた土地ってどうなったの?」
「『異世界ゲート関連法案』の結果、国の所有物ということになったな。土地代はお前の口座に振り込まれてるから後で確認しろ」
いくら個人の土地とはいえ、『異世界ゲート』の管理を国がしないわけにはいかない。
管理のために土地の買取りが必要だというのは碧にも理解できたし、あの土地に思い入れがあったわけではないので別に困らなかった。
だが、そうなってくると問題がある。
「お金とかは全然いいんだけど、僕の住むところがなくなったのは困るなぁ。ホテル暮らしも居心地がいいけど、あんまり大量に私物持ち込めないしね」
「既に結構散らかってるけどな……」
「あ、隼也。これあげる。魔力込めると光る球なんだけど、音も出るようにしてみたんだ。きっとお子さんも喜ぶよ」
『ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!』
「なんか魔力込めたら赤く光って叫んだんだが」
「仕様だから大丈夫。8割の確率で笑い声が、2割の確率で悲鳴が出るよ」
『きゃっはっはっはっは!』
「……怖」
虹色に光りながら笑い声を上げる球体になんとも言い難い
それを見て笑い声を上げる碧。どうもどうやら、からかうためにわざと気持ち悪くしたらしい。
「で、話を戻すと、僕は齢15にして家を失ってしまったわけだ」
「俺の家に住めばいいだろ?」
「やだよ。何が悲しくて親友が夫婦でイチャイチャ子育てしてる家に居候しなくちゃいけないのさ。適当に家借りるからいいよ。
あー、どこかに山買ってそこに住んでもいいね」
「それなんだが、俺から提案があるんだ」
「僕にとってプラスになる話?」
「そこそこな。
実は、俺は今紆余曲折あって『第一魔法魔術高等学校』ってとこの校長をしてるんだ」
「え、なんでそんな偉くなっちゃったの?」
「異世界と繋がってすぐは元から魔法使いだった奴らしか戦えなかったからな。必要に駆られて魔物と戦いまくってたら、なんか偉くなってた」
「隼也が偉いとか、似合わないね」
「お前マジで殴るぞ?」
ニヤニヤした顔で煽ってくる碧。思わずマジで手が出そうになる隼也だが、大人なので堪える。
そして、溜息をついた後話を戻した。
「俺が言いたかったのは、『第一魔法魔術高等学校』の学生にならないか? って勧誘だ」
「なんでまた。僕そんなところに通わなくても既に戦力だよ?」
「そうなんだろうが、法律的な問題があってな。
中学を卒業した者のうち魔法および魔術の才能が認められる者は、それらを制御するための学習を義務付けられているんだ。
わかりやすく言えば、魔法使いの才能がある人は専用の高校に通う必要がある」
「……あー、国は魔法使いを管理したいんだね。そりゃそうか。銃どころか戦車以上の戦力になり得る存在を放置できないよね。
最低限名前は記録して……危険そうな人には監視もつけたいだろうし」
「そういうことだ。で、それはお前も例外じゃない。まぁ、お前の場合上手く誤魔化すこともできなくはないが……将来のことを考えると、しっかり卒業した実績くらいは残した方がいいぞ」
「うーん、将来って言われてもピンとこないなぁ」
刹那的な生き方をしている碧としては、将来役立つと言われてもピンと来なかった。
それに、碧には一つ目標があった。
「僕は、この世界の魔術の発展に貢献しなきゃいけないんだ。ほら、僕が処分されなかった理由って、魔術技術が向上するまでに異世界ゲートに何かあったら困るからって理由でしょ?
だから、弟子でも見繕おうかなって思ってたんだよね」
だから、学校に通う時間はない。
そう言う碧だが、隼也からすれば尚更学校に通うべきだと思う。
「なら、学校で弟子を探せばいい。第一魔法高校は優秀な学生の集まりだから、弟子探しにはもってこいだろう」
「……ほんと?」
「嘘ついてどうする。それに──今の魔術技術について学ぶいい機会じゃないか」
「たしかに……」
隼也の説得に、5秒ほど唸った後「じゃあ、通ってみようかな」と言う。
「決まりだな……まぁ、異世界の魔術に関しては、どうか分からないが」
「え?」
「いや、なんでもない」
意図的に聞き取れない程度の声で話した隼也は、首を左右に振ると詳しい手続きについての話を始める。
今から手続きをすればちょうどゴールデンウィーク明けまでには編入できるという。
そのスピード感に碧は驚くも、早い分には困らないので大人しく頷いておいた。
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