第三章2学期編 エピソード4

サプレッサーが装着されたM4A1で無防備で無警戒な半グレを始末する。

狭い廊下に少人数の警備しかいなくて拍子抜けだった。

しかも何も武装しておらず、俺に気づいても死ぬまで呆然としていた。

本当に犯罪組織『大罪』の拠点なのか疑いたくなる。

探せる範囲での警備を始末し、マガジンを交換した俺は左右にびっしりある扉の中を調べた。

ま、ざっとそういう行為をするにぴったりな場所だったよ。人はいなかったが。

恐らく営業していないから人はいないのだろう。

ここはハズレか。セバスチャンの方が当たってるといいが。

全ての部屋を調べ終え、一息ついていると、後方から銃声が鳴り響いた。

位置は恐らくハンターがいる部屋だ。俺かセバスチャンが敵を見逃してたか?

とりあえずハンターの救援に向かわなくては。

俺は急いでハンターがいる部屋へ向かった。


少し前、ジョーカーとは反対側の廊下に出たセバスチャンは最後の敵の首をへし折った。

周りには銃殺された半グレが転がっている。

静けさが戻り、セバスチャンが先へと進むと、すぐ横の扉から物音がした。

その扉を開けて中に入ると、ベッドの毛布に体を隠す人間がいた。

セバスチャンが無理矢理毛布を剥がすと、丸裸の中年太りの男がいた。

「ひぃ!」

「あなたは……確か警視庁の刑事じゃありませんか」

セバスチャンは男に見覚えがあった。

内通している警視庁にいた刑事だった。

まさかこんな所で出会うとは思ってもいなかったが、セバスチャンはすぐにM4カービンライフルを向けた。

「ま、待て!撃つな!金なら幾らでもやる!だから見逃してくれ!」

「……あまりよろしくない趣味をお持ちのようで」

男の背後に倒れているアザだらけの女性に目を向ける。

もう息はしていない、男が殴り殺したのだ。

「頼む!金はたっぷり積んでやる!」

「……あなたは今までそうやって生きてきたのですか?」

セバスチャンの問いに男は呆然とする。

セバスチャンは一瞬だけ目を閉じて、引き金に指をかける。

「本庁の方ではちゃんと殉職したと言っておきます」

5発体に撃ち込み、男を地獄に送った。

その後、建物の制圧に戻った。


その頃、待機していたハンターは退屈していた。

敵が外に出るのを阻止する為に唯一の出入り口を塞ぐのは良いが、やはり暇になってしまう。

持ってきたショットガンとハンドガン、そしてマチェットを手入れしていると、真正面の壁から音が鳴った。

物陰に隠れ、モスバーグショットガンを手にする。

壁の裏に扉があり、こちら側に開かれた。

(隠し扉……残って正解)

ハンターは退屈にならずに済みそうだと安堵し、中に入ってくる敵を確認する。

先にAKMを持った半グレ2人、続けてスーツを着たボディーガードが2人、そして写真で見たターゲットリヴが入ってきた。

全員銃を手にしていて、ボディーガードの片手にはM iniUZIサブマシンガン、リヴの手にはワルサーPPK。

「ここまで来たら大丈夫だ」

「警報を真に受けて正解だったぜ。一体侵入者は何者なんだ?」

「分からないが、俺達以外は連絡がない。相当な手練れの筈だ」

リヴ達は仕掛けていた警報装置から侵入に気づき、隠し通路から通ってここへ来たようだ。

幸運にもまだ自分達の正体に気づいていない。

「とりあえずアジトを捨てて逃げよう。本部に連絡すれば何とかなる」

「そうね。なら、さっさと私を本部へ連れてって」

リヴが男達を従え、移動を始めようとする。

ハンターは男達に気を引き締めさせないようにするために、覚悟を決める。

遮蔽物からモスバーグショットガンを構え、手前にいた半グレに散弾を撃ち込んだ。

「ごへっ!?」

散弾を真正面から受けた半グレは数メートル吹っ飛ばされた。

奇襲を受けてリヴ達が動転する。

「クソ!ここにもいるぞ!撃ち殺せ!」

半グレとボディーガードが銃を連射し、ハンターに弾丸を放つ。

ハンターは机を蹴って盾にし、左手にマチェットを持つ。

机からショットガンを撃ち、ボディーガードの1人を撃ち殺す。

一気に2人減らされたリヴ達はハンターに気圧されていた。

それでもまだハンターに向けて発砲する。

ハンターはショットガンのポンプを引いてシェルを排出し、半グレ達の前に出て突っ走る。

「死ねぇ!女ぁ!」

2人が銃の引き金を引こうとした時、ハンターは左手のマチェットを投げつけ、ボディーガードの胸に当てた。

「がぁぁぁ!」

「おい!クソ!」

味方が殺られ恐怖に駆られるも再びAKMを腰だめで構える。

しかし、既に距離を詰めたハンターにショットガンの銃口を突き付けられ、発砲と同時に風穴を開けられた倒された。

「呆気ない。雑魚にも程があるわね」

ハンターがショットガンに散弾を装填していると、隠れていたリヴ姿を現す。

「あ、あんた!よくも……!」

片手でワルサーPPKを構え、ハンターに銃口を向けている。

恐怖で拳銃ごと腕が震えており、ハンターは素人だと判断した。

「撃てるの?小口径のPPKなら私の頭を撃ち抜けるわよ。反動が少ないから試してみて」

「う、うるさい!本気で撃つわよ!」

ハンターに煽られて撃つ気に駆られるリヴ。

ハンターは撃てるのに撃てないリヴの姿に嘲笑する。

それが癪に障り、リヴは引き金を引いた。

弾丸はハンターに向かうが、ハンターは体を横に反らして避けた。

「……ぇ?」

「撃つ部位、弾道、タイミングが見え見えよ。だから素人」

リヴに避けるのに必要な要素を話すと、小型ナイフを投げ飛ばし、リヴの右腕にナイフを刺す。

「ギャァァァ!腕が、腕がぁ!」

痛みで拳銃を落とし、痛みにもがき苦しむ。

ハンターはワルサーPPKを回収し、リヴに向ける。

「痛みは人間である証拠よ。痛みがあるからこそそれが実感できる。ま、最近は痛覚をなくしたいっていう人間が多いけど。あなたは犯罪組織と繋がってるから、拘束するわ」

「や、やってみなさいよ……。私は大罪の色欲の稼ぎ頭よ!私に手を出したら、本部が仕返しするわ!」

「それは無理だ」

声がした場所に目を向けると、ゼロが扉から出てきていた。

「今まで犯罪で大成を成してきた奴らだ。下部の人間は切り捨てる。それが大罪のやり方だ」

「あ、あなた……蓮司じゃない。何で……?」

「ま、お前とだいたい同じ。お前とは違って犯罪者じゃないが」

侵入者の正体に気づいたリヴはかなりショックを受けていた。

ハンターは女の勘からジョーカーを気に入っていたと感じ取る。

目的を達成し、セバスチャンと合流しようとした時、リヴの体が宙に浮いた。

「お待たせしました。ここから立ち去りましょう」

セバスチャンがリヴを担いだのだ。

気配を察知できず、不意に現れたセバスチャンに驚く2人。

やはり組織の上位は一味違うと実感した。

その後、リヴを連れて立ち去った現場には数十分後に警察が到着した。

その警察はセバスチャンの息がかかっている者ばかりだった。


作戦を成功された俺達はリヴから様々な情報を貰った。

大罪はどの犯罪も完璧にこなし、利益を上げているが、とある問題を抱えている。

特にアメリカ、ロシア、中国支部が特殊部隊の襲撃で拠点を潰されていた。

全体的に売り上げが落ちており、組織として起死回生を狙っていた。

そこで目を付けたのが何故か美代子だった。

詳しくは知らないようだが、彼女の体の体質に価値があるようで、日本支部は総力を挙げて彼女を狙っていた。

そのやり方は姑息で、彼女の両親を事故に見せかけて殺し、親戚も金で買収して彼女を捕らえる駒として利用した。

最近になってようやく捕らえたが、邪魔したのがセバスチャンだった。

刺客を差し向けても返り討ちにされ、警察を利用しようとしても逆に利用されて不利になっている。

リヴはそこまでしか知らなかった。

リヴは俺の正体を知った上に大罪のメンバー。処理はセバスチャンに任せた。

非情だが、犯罪者なら多少は心が痛まず済む。

一方、斗真はラビットの尋問で情報を吐いた。

尋問になった理由は尾行に気づいた斗真が半グレを利用して襲いかかったからだ。

ラビットが半グレを瞬殺し、斗真にパンチを食らわせてブラックオプスが利用している倉庫にぶち込んだ。

ラビットは斗真の女性癖に嫌気が差していたのか、かなり暴行を加え、質の良い情報を引き出した。

斗真は美代子捕獲の為にロシア支部が戦闘部隊を派遣した事を知っていた。

日本支部の仕事の遅さに苛立ち、遂に他国から戦闘に適した部隊を送ったのだろう。

近い内にドンパチが起きるかもな。気を緩めず備えとくか。

ちなみに斗真も組織によって社会的に抹消された。

後日、学校から2人が転校すると伝えられた。それがカバーストーリーだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る