第三章2学期編 エピソード3
絵空から与えられた情報を元に、美鈴と連携して調査した。
美鈴には楠木斗真を任せ、俺は花園リヴと伝治を調べた。
花園とは偶然という形を装って、わざとハンカチを落として接触した。
花園はハンカチを俺に渡すと、グイグイと話しかけてきた。
俺はこの機会だからこれからも話したいと連絡先を交換し、花園と友好な関係を築いた。
美鈴も得意のコミュ力と容姿で斗真を落とし、連絡先をゲットした。
伝治とはサークルに顔を出しながら時々話して情報を引き出すが、中々尻尾を出さなかった。
やはり伝治はガードが固い。しばらく様子を見よう。
一週間やり取りしたが、彼女は表面上は明るい性格をしていた。
友達の多さや親の事、そして自身の容姿の事をいい話風に自慢していた。
絵空からの情報提供で、自分より格下の相手に集団でいじめていると動画と共に教えられた。
教室に隠しカメラを仕掛けてあり、教室の隅から見下ろすように映像が流された。
放課後によってたかって1人を集団で追い詰める様子は何とも呆れを通り越して哀れに思った。
だが、映像から流れた声で1つ気になった事があった。
『私には海外のお友達がいるんだから』
海外の友達を持つ学生は珍しい。
リヴについて調べてみると、確かに海外のファンと一緒に映っている写真があった。
よく見ると、見た目でヤバいと分かる人間とも仲良くしてる。
まだ薄いが、1つ材料を手に入れた。
一方、美鈴の方は斗真の裏を見たそうだ。
時間があって互いに報告した時に話してくれた。
どうやら斗真は夜に中学時代からの友達である半グレとつるんで、女を食い物しているそうだ。
しかも巧妙に隠し通し、表と裏の顔を使い分けている。
美鈴は極秘裏に斗真の被害者と接触し、このような情報を仕入れてきた。
被害者の脱け殻のような姿に美鈴は憤りを感じている。
2人共ここまで悪になってるなら、容赦する必要はない。
チャンスができたら捕まえてやる。
同じ頃、セバスチャンは一本の電話を受けていた。
「そうですか。あの手下は色欲に所属していましたか」
『いくら個人情報を消したと言えど、元となった情報からは逃れられない』
美代子を拐おうとした男2人について、ネットの情報屋から情報を得ていた。
「拠点の場所は?」
『歌舞伎町の裏路地、とある半グレ組織が住み着いている建物がある。そこに色欲の幹部がいると情報が入った』
「拠点の警備の数、武装は?」
『見張りが少なくとも4人、武装は分からない』
「分かりました。報酬は後で振り込みます」
セバスチャンは電話を切って、情報屋から指示された口座に金を振り込み、準備を始めた。
複数のバックに武器、装備を詰め込み、それらを予め用意した車のトランクに入れる。
家の人間に出掛ける事を伝えると、車を出して目的地へ向かった。
放課後、リヴを尾行し、距離を保って後を追った。
最初友達の喋りながら歩いていたが、どんどん友達がリヴの元を離れ、今は1人だ。
リヴは尾行されているとは思っておらず、後ろへ振り返る事なく歩いている。
そんなリヴが向かった先は歌舞伎町だった。
放課後とはいえ夜の顔が表しつつある歌舞伎町に一体何の用だ?
更に尾行すると、途中で歩道から路地へ消えた。
「リヴは通りから路地へ消えた。後で合流だ」
『了解。そっちに向かう』
今回、ラビットは斗真に付きっきりなので、フリーだったハンターをバディとして連れてきた。
ハンターはリヴの潜伏候補地に張っていたが、ちょうど目を付けていた候補地付近にいるので合流を図る。
俺はリヴの後を追い、路地へと入る。
この路地は狭い上に同じような建物が並び、物静かだった。
それにしても、どこへ消えたんだ?建物のどれかに入ったのか?
そうなると片っ端から侵入する訳にはいかない。怪しまれるからな。
さて、どうしたものか……。
「ッ!?」
背後に気配を感じ、振り向いてポケットのボディーガード拳銃を握る。
しかし、ポケットに出す前に腕を押さえられ、銃が出せなくなった。
相手は灰色の都市型迷彩の戦闘服を着た謎の男。
顔は目出し帽で隠され、頭にヘルメットを被っている。
スリングで様々なアタッチメントを装着したM4カービンライフル。
ホロサイト、サプレッサー、レーザー、フラッシュライトと軍隊並みにアタッチメントが着けられている。
また背中にスリングで俺が使っているのと同じM870ブリーチャーショットガンを背負っている。
俺のとは違ってポンプにグリップがあり、折り畳みストックがあるタイプだ。
腰のホルスターにはM45A1ピストル。
コイツは一体……?感じるまで気配がしなかった。
マズイ。敵に先手を取られた。しかも握る力が強くて反撃が難しい。
大罪にこんな凄腕がいるとは……。
「……おや?あなたはもしかして、ジョーカーさんではありませんか?」
敵からそう言われた。
そういえばこの声、聞き覚えがある。
この敬語の口調にこの屈強な体格……。
「……セバスチャン。あんたか」
組織の中でかなりの上位の地位にいる幹部セバスチャンだった。
銃を下ろしたセバスチャンは俺に質問してくる。
「あなたは何故ここにいるのですか?潜入任務中なのではありませんか?」
「その最中でな。候補が2人出たんで、俺とラビットでそれぞれ調査中。ある女を尾行していたんだ」
「なるほど。そうでしたか。では、上にいる人は仲間でしたか」
ハンターの存在に気づいているな。
すると、ハンターがパイプを伝って下に降りてきた。
「何で捕獲対象がいるの?」
「こっちが聞きたい」
「やはり、ハンターさんでしたか。狩人のような気配を感じましたのでもしかしたらと思いましたが、当たって良かったです」
「相変わらず化け物みたいな察知能力ね」
ハンターは呆れながらセバスチャンに言った。
「それで、女はどこに行ったの?」
「それがこの辺で姿を消してな。分からないんだ」
俺がハンターに伝えていると、セバスチャンが前に出た。
「あなたが追っている女性は恐らく、ここから少し先の建物に向かった筈です」
「分かるのか?」
「はい。私が持っている情報によれば、その建物に大罪の色欲の拠点があるそうです」
大罪という言葉をここで聞く事になるとは。
別だったが、大元はアリスがいた組織と同じだ。
まさかリヴは大罪と繋がっているのか?
「途中で少女を見かけましたが、お知り合いですか?」
「潜入してる学園の生徒」
「なるほど、分かりました。では彼を捕らえましょう。ついて来て下さい」
セバスチャンに言われるがまま後を追い、セバスチャンが足を止めた建物の前に立った。
一見何の変哲もない建物だが、ここに大罪の拠点があるのか。
「よし、じゃ始めるか」
ハンターからM4A1を受け取り、レバーを引いて弾を込める。
ハンターはモスバーグショットガンを取り出して、ポンプを引いた。
これより、敵勢力の拠点へ突入。
ここはアメリカではなく日本。サプレッサーが付いているとはいえ外での発砲は避けたい。
俺とハンターで突入と制圧方法を考えていると、セバスチャンが扉を蹴破って突入した。
「おいおい、先に行くなよ」
セバスチャンの後を追って中に入り、既に発砲しているセバスチャンに加わり、警備の半グレを始末する。
襲撃されると思っていなかった半グレは抵抗する間もなく排除された。
全ての半グレを倒し、室内を調べる。
しかし入った先のホール以外、最低限の部屋しかなく、とても拠点とは言えない。
「…………」
ハンターがホールで匂いを嗅ぎ、カウンターに向かうと、半歩ずつ床を足でつつき始めた。
何歩が歩くと、明らかに違う音が出た。
そこに手を触れると、小さな扉のような物があった。
「隠し扉か」
俺のバールでこじ開け、地下への扉を開く。
「思ったより深そうだ」
「行きましょう」
地下への階段には照明があり、ライトを使わずに済んだ。
階段を降りると、ただ机と椅子が並ぶだけのホールに着いた。
左右には扉が1つずつある。
「おお、ここが中継ポイントか」
「3人で攻略するのは難しいそうですが、ジョーカーさん。1つだけ制圧して下さい。ハンターさんは万が一の場合に備えて、ここに残って下さい」
なるほど。2人で制圧し、ハンターは逃げた敵を食い止めるって訳か。
現状3人だけしかいないから妥当か。
「じゃ、片方は任せたぜセバス。ハンター、もし無理なら撤退しろよ」
「分かったわ。気を付けてね」
ほぼセバスチャンと同時に部屋に侵入し、どんよりした地下空間を進んだ。
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