第9話
新聞部のアンケートが終わると、集計をまとめて印刷をする。
そういう大事な仕事は3年生の仕事で、私達1年生と一つ上の2年生で新人戦の取材に行くチーム決めをしていた。
中村さんは私に合わせて剣道部チームになってくれて、取材に行く日の申請書を書いていた。その時、裏庭に男子剣道部の一年生の一団が一列になって筋トレを始めたのだ。
場所は丁度、新聞部の窓の下。
すると2年の先輩の中嶋祐子先輩が窓を開けて
「小島〜!何で新聞部の窓の下でやってるの?」
と、な、なんと小島先輩に声を掛けたのだ。
すると窓からにょきっと小島先輩の顔が出て来て
「え?だって、此処しか場所が取れなかったんだよ」
って答えている。
「あんた、新人イジメしてないでしょうね〜」
と笑って声を掛ける中嶋先輩に、小島先輩は苦笑いを浮かべて
「するか!一緒に筋トレしてるんだぜ!むしろ、褒めて欲しいもんだよ」
そう言って笑っていた。
普段、私が見ることの出来ない小島先輩の姿に目が離せないでいる。
すると小島先輩がもう一人の2年生、田中先輩に視線を向けると
「田中〜!今年は剣道部に誰か取材来るの?」
って聞いて来た。
すると真面目な田中先輩は顔色も変えずに
「お前に教える義理は無い!」
そう言って窓を閉めてしまった。
私が恨みの視線を田中先輩に送ると
「話を先に進めるぞ!」
と言って、他の部活の取材担当者が決まって行く。
すると田中先輩が
「あ〜、中村と相原。剣道部だけじゃなくて、男子バレー部にも取材行ってくれないかな?」
と言い出した。
(はぁ?何で男子バレー部?)
そう思って目を据わらせると、中村さんが
「はい!行きます!」
って、元気に返事をしてしまった……。
紺野先輩が居るから嫌だとも言えず……、大人気のサッカー部と野球部は3年生が行くらしく、私達一年生は人気のないチームの取材を担当する事になった。
「でも、今年はまさかの剣道部が真っ先に埋まるとはびっくりだな」
田中先輩が呟くと、中嶋先輩が
「明日、小島には『うちの可愛い一年生が行くから、よろしくね』って言っておくね」
と話している。
「あの……」
私がドキドキしながら中嶋先輩に声を掛けると、中嶋先輩は笑顔で振り向いた。
「なに?」
「中嶋先輩って、小島先輩の彼女なんですか?」
そう聞くと、中嶋先輩は一瞬目を点にしてから
「嫌だ!止めて!冗談じゃない!」
って叫んだ。
「え?」
驚く私に
「小島でしょう?私と身長変わらないし、うるさいし、剣道しか興味の無い剣道バカだよ。冗談でも、勘弁して欲しい」
そう言われてしまった。
「そう……なんですか……」
戸惑いながら呟いた私に、中嶋先輩はニヤリと微笑み、私の肩を掴んで部室の隅っこに連れて行くと
「え?何?もしかして、相原さんが剣道部に取材に行くのって小島が目当てなの?」
と訊かれてしまった。
「そ(んな)!違(います)!……!!」
慌てる私の肩に両手でぽんぽんっとすると
「任せて!協力する。私、隣の席なの!あんなアホに相原さんは勿体無い気がするけど、私は相原さんの味方だから!」
と言われてしまった。
私はこの日、どうやら強力な助っ人を手に入れてしまったようだった。
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