王都の冒険者ギルド

入学試験まではまだ日にちがある。一応俺たちは推薦で来ているので入試というよりはクラス分け試験みたいなものだが。暇つぶしに何か依頼を受けることにした。レストンとアリスも誘いたいところではあったが試験で当たる可能性もある以上レストンは乗ってこないだろう。基本的にレストンは勝つためならどんな努力も惜しまない。アリスならワンチャン乗ってくるかもしれないが。


ということで冒険者ギルドに昨日に引き続き行ったら、異世界もののテンプレというかなんというか……案の定ガラの悪そうな冒険者に絡まれた。うん。アリスを連れてこなくてよかった。あいつ連れてくると殺しかねんからな。


「おいおい、なんでこんなちびガキが冒険者ギルドにいるんだ?ここはいつから子供の遊び場になったんだ?」

「そうだそうだ!ちびガキは家に帰ってママのおっぱいでも吸ってな」


ギャハハッハッハ!と下品な笑い声をあげて俺を煽ってくる。……よかったなこいつら。ここにアリスがいなくて。アリスがいたらこいつらは木っ端みじんになっていたところだった。とはいえだ、ここまでさんざん言われればさすがの俺もムカついてきた。


「冒険者ならこのくらい避けられて当然だよなぁ!?」


男が殴りかかって来た。お、ありがたい。向こうから手を出してくれるとは。俺は男の拳をつかむと骨を砕いてギルドの入口めがけて放り投げる。男は入口を突き破り向かいの建物にぶつかってあっさり死んだ。……俺としては軽くやったつもりだったんだけどなあ。さすがに殺人犯扱いされるのは癪だし洒落にならないので《転生の神》で全ステータスを十分の一くらいにしてスキルも半分ほど消去して蘇生させた。蘇生リザレクションを使う手もあるにはあったがそれだと相手もステータスをいじれない。今のやつは一般人以下といったところか。正直三歳児にも負けるだろう。というかこれからは手加減も覚えなきゃならないのか。


「さて、お前らはどうする?」


残りの男たちは俺が視線を向けると肩をびくりと震わせ回れ右をして一目散に逃げていったのだった。


「あの……大丈夫でしたか?」

「ああうん。大丈夫大丈夫」


受付嬢が心配してくれたので「大丈夫」と答えておく。なんせケガなんてしてないしな。


俺はノクターン大森林街道沿いの魔物討伐の依頼を受けた。


俺は転移で一瞬にしてノクターン大森林にたどり着いた。ちなみに王都からノクターン大森林までは近いわけではない。なのに王都に依頼が舞い込んでくるのかというとノクターン大森林の街道付近の宿場町の冒険者では抱えきれないため王都に依頼が回ってくるようだ。


そんなことはともかく俺はノクターン大森林へと足を踏み入れた。


「おーおー熱烈な歓迎だな」


森へ入るなりオークが襲ってきたので魔法を放ってオークを地面へと沈める。


ひとくくりに魔法と言っても麻帆の使用方法で微妙に名称が異なる。自然界に満ちている魔力を使って魔法を行使するのが魔法、体内にある魔力を使って行使するのが魔術。基本的に俺が使っているのは後者だ。


魔術の利点は魔法と違って高速で放てるのと魔力の霧散率が少ないため必然的に魔法よりも火力が高くなる。


普通の魔法使いが魔法を行使する際に実際に使える魔力は集めた分の30%といったところだ。それに対して魔術ならほぼ100%を魔法へと変換できる。


まあただ魔術は体内の魔力を使い切ってしまったらどうしようもなくなるが、バカのように魔力を持つ俺からすればあってないに等しい。


「……張り合いがないな」


この場にレストンがいたら「ザグと張り合える相手がいたら世界の危機だよ」と突っ込むだろうが生憎この場にレストンはいない。


「しゃーない。竜でも狩って帰るか」


俺は二日連続で竜を丸ごと持ち込んでギルドを騒然とさせるのであった。

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