贈り物

その日俺が眠りにつくといきなり精神世界へと引きずり込まれた。


「なんだよ……俺はかなり眠いんだが」

「突然やっちゃったのは謝るよ。でもイザナミのやつが急にやってきてお前を呼べというから……なんかどうしても渡したいものがあるそうなんだが」

「……お前には渡されていないのか?」

「ないね。ただ悠斗を連れてきてと言われただけだから」


それなら仕方がない。早めに終わらせて早めに眠って明日に備えよう。別に明日は何もないが。


「わかった。じゃあ、連れてってくれ」


俺がそういうと空間が塗り替えられていき、俺が転生の時に目にしたあの部屋になった。そして目の前には悠然と足を組んで座るイザナミの姿があった。


「久しぶりだね悠斗っち」

「悪いが俺は相当眠い。手短にやってくれ」

「わおっつれないね~。まあ、そこがいいんだけど」


そういうとイザナミは懐からドラゴ〇レーダーみたいなものを取り出した。


「なんだそれ?」

「うお……服がはだけて胸元が見えちゃってるのに気にしないとは……私もプロモーションには割と自信あるんだけどな~……あ、乳首も見せた方がよかったかな?」


俺はイザナミの頭をぶったたいた。


「よ、よく君は神にそんなことできるね……」

「スキル的に見れば一応俺も神なんだが?」

「あ、そっか……話を戻そうか」


コホンと軽く咳ばらいをし、乱れた衣服を整える。


「ふっふっふ~これはね~魔道具だよ!」


……うん。さすがにそれはわかった。なんかだんだん腹が立って来たので拳を構える。


「え?ちょっと?それはやめようね?ほ、ほら早く説明するから」

「気にするな。念のため構えてるだけだから続けろ」

「まずは無事に王都に着いたようで何よりだよ。君の彼女は王都で生を受けているからもしかしたら会えるかもしれないね。同年代だし。でもさすがの君でも容姿が変わったルミちゃんを探し当てるのは無理があるだろう?」


そりゃそうだ。俺もどうしようかと悩んでいたところだった。


「そこでこの魔道具の出番なのよ。これはね、特定の魂源にのみ反応するレーダーみたいなものでね、つまるところこれを使えば簡単にルミちゃんが探し出せちゃうというわけ!私天才!ほめたたえなさい!」

「はいはいすごいすごい。それでその魔道具はくれるのか?」

「もちのろん!貸し一ね」

「おい」


お互い転生したのだから昔にとらわれる必要はないのかもしれない。それでも一回くらいは会って話したい。昔の関係になることを強要するつもりはないしそんなことは死んでもしたくない。俺が帰ろうとするとイザナミに声を掛けられた。


「最後に一つ忠告をしておくわ」


それは今までのお茶らけた声ではなくマジな奴だった。


「13年前のクラスメイト達が魂だけそっちに連れていかれた。気をつけなさい。あの真琴とかいうクズにルミちゃんを渡しちゃ絶対にダメだからね」

「無論だ。忠告ありがとう」


イザナミの姿がぼやけて消えていき目を覚ますと……すでに夜は明けており俺は部屋で「ふざけるなー!」とイザナミへの怒りを叫ぶのだった。

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