青白い部屋にて

 目を開けるとそこは青白い部屋だった。そこは青白いだけで周囲には何もない。俺の目の前には黒髪黒目の羽衣を纏った女神のようなやつがいた。その顔に張り付ける慈愛のこもった笑顔が非常に胡散臭い。


「え~とキミ、とりあえず状況わかってる?」

「地面に落ちて死んだ?」

「まー簡潔に言うとそうだよね」

「あのー……転生ってやつですか?」

「そーだよ私的には君が転生しようとしまいとあんまりカンケーないんだけどね。上の人がうるさいんだよ」


なるほど。夢だな。俺はそう思って頬をつねる。うん。やっぱり痛くないから夢だな。


「とりあえず私はイザナミだよ」

「はあ」

「キミはとりあえず今から剣と魔法の世界に転生するの。理解できる?」


なるほど。よくわからないが、最近流行っている異世界転生というやつか。


「え?今地球で異世界転生って流行ってるよね?」

「まあ確かに流行ってますけど、それが俺を転生させる理由じゃないでしょう?とりあえず転生についてはわけがわからないけどわかりました。でも肝心の理由を聞いてないです。なんで俺なんですか?」

「君だけじゃないよ?少なくとも死んだ人間の二人に一人が転生してるから。その代り記憶はなかったり曖昧だったりするんだけどね。君は記憶を持ったまま転生できる。ただの特別例だよ」

「なんで俺が特別なんです?」

「それは君と一緒に転生するっていう阿呆に聞きな。それじゃあ君に転生後のステータスを教えとくね。え~と……水晶盤は……ああ、あったあった……はい?」


適当だなおい。というか、俺と一緒に転生するやつって誰なんだろう。そんなことを考える俺をよそに、イザナミは水晶盤を持ったままその場に氷づけになったかのように動かなくなった。


「……魔力量2700万に魔力強度120万?いやいや……さすがにそれはヤバいでしょ……」

「そんなに悪いんですか?」

「でたらめすぎるわ!私の話聞いてた?」


そしてイザナミは頭を掻きむしった。


「しかも魔力量と魔力強度だけでも異常なのに何よこのスキル群……《無制限時間制御》に《無制限空間制御》《無制限物理法則制御》《無制限物質生成》《無制限地形操作》《無制限飛行》《炎神の加護》《直接干渉無効》《転生の神》……なんで最初っからエクストラにユニークがそんなにあるのよ……」


イザナミはパンッと手をたたくと「もういいや!」と諦めた。お前仮にも女神だろ。そこのところしっかりしてくれよ。


「よし!じゃあ転生にあたって何か一つ願いをかなえてあげる」

「なんでも?」

「もちろん。今までこういった特別待遇で転生する人たちはチート装備だったり、面白いところで言うとかわいい幼馴染が向こうでほしいとか一番笑ったのは女神を連れて行った人かな?」

「え?アンタ連れてかれたの?」

「いやいやわたしじゃないよ?私は特別扱いの人を転生させる女神たちの上に立つ存在だからね。連れてかれてはないよん」

「それならルミを俺と一緒の条件で転生させてほしい。ルミは今までの感じだと特別待遇でも何でもないんだろ?」

「そうだね~魂源にくっついてる記憶とかそこら辺を漂白して現世にポイか、本人が望めば天国行きだね」

「じゃあ、それでいい。どうせ俺そのものがチートと言っても過言じゃないんだろ。ならこれ以上チートを増やしても意味なんてないし、それに俺はまだルミと一緒にいたい。理由はそれだけでいい」

「そうか。わかったその願いを聞き届けよう。楽しませてくれたお礼として生まれる家とか性別とか外見とか指定してもいいよ?」

「性別って……転生して向こうで性別が変わるなんてあるのか?」

「たまにね、それとごくまれに二度目の人生は違う性別で生きてみたいっていう人もたまに」

「あ~……できれば俺は男で、ルミは女でお願いします」

「了解しました」


俺の足元に青白い光の魔法陣が浮かび上がり俺を包み込んでいく。


「それじゃあ転生だよ。向こうでも元気で。それとキミほどの力があれば向こうの世界からこちらの世界へ来ることだって可能だよ。なんせ世界って言ってるけど実際には宇宙空間でつながってるわけだからね。それじゃあ、ミャーマをよろしくね」


そう言ってイザナミはウインクをした。そして俺の身体が光の粒子となって消え去る。ところで、ミャーマって誰なんだ?俺の疑問は遠ざかる意識の中に溶かされて消えていった。

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