悪意ある視線
「悠斗!大丈夫?」
ルミは鞄をもってふらふらと道をさまよい歩く悠斗に向かって走る。
「ありがとう……ルミ」
悠斗はルミの肩を借りて何とかまっすぐと歩き出した。
「ヤバい。二日酔いの次の朝みたいだ」
「ねえ、悠斗。さすがにお酒を飲んだことなんてないよね?」
「当たり前だ。なんとなくだよなんとなく」
悠斗がこんなにもふらふらでボロボロなのは夜遅くまでVRゲームのイベントで最後まで残っていたからだ。バトルロワイアルで最期の最期まで残っていたのだ。ちなみにルミも同じゲームのイベントに参加していたのだが割とすぐに規定回数の5回死んだためイベントから解放されていた。
「おはよう。お二人さん」
ゆっくりと進む二人に声をかけたのは同じクラスの松本純だ。
「お前もやってたよなイベント……」
「そりゃあ俺も割と早く5回死んだからね。ルミよりは持ちこたえたと思うけど、あの地獄絵図の中を生き残れるお前が凄すぎるだけだからな?」
「そんなに褒めるなよ~」
「「褒めてない」」
「それにしてもお前、まだ真琴のこと許してないのな」
「当たり前だろ。あの時俺が少しでも遅れてたらルミはどうなってたと思う?」
「まあ、そうだよな。しかも親に握りつぶされたんだっけ」
真琴の父親はこの県の知事で真琴がやらかしたことを握りつぶしてしまったのだ。
「確かルミの両親も知らないんだっけ」
「うん。知事が私が一人の時に家に来て黙っておくようにって脅してきて……」
「まあとりあえず俺が真琴をキルするのは義務だな」
「確か真琴どこのギルドにも入れてもらえなくなったんだっけ」
悠斗が毎イベントごとに真琴をすぐさまキルしまくるせいで真琴をギルドに入れるとイベントで勝てなくなるといううわさが広まり誰も真琴をギルドに入れさせようとしなくなったのだ。これが一般的なプレイヤーならともかく、悠斗は運営直々に《絶対切断》の二つ名を貰ったゲーム内に八人しかいない
しかも真琴が親に言ったところで知事が動けば2年前の事件がおのずと明らかになる。悠斗はそういったことも狙って嫌がらせのように真琴をキルし続けているのだが一向に尻尾を出さない。
「まあ確かに
「そういえばさ、今何時?」
そう言われて純は腕時計を見る。
「7時50分」
純は晴れやかな笑顔を二人に向ける。
「「「急げぇ!!」」」
走れない悠斗を純が背負い走り出す。そのおかげもあって何とか学校には間に合った。本当にギリギリで三人が滑り込むと同時に校門が閉められた。
教室に入ると真琴が悠斗の方へズンズンと歩いてきた。
「お前、また俺を狙って5キルしただろ」
「やられたくなければやられないように考えるか自分のやったことを認めて大々的に報告するんだな。ま、その場合お前このクラスにいれるかどうかは知らんけど」
悠斗はそれだけ言うと自分の席に行ってうつぶせになった。真琴が忌々しいといった目で悠斗を見ているのにも気が付かずに。
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