かつての悲劇
その日は特に寝苦しい夜だった。
「ゼロ、……あなたはどこまで堕ちたのですか。そんな姿に身をやつすなど」
「ミャーマ、考えるだけ無駄だ。あいつはこの世界の敵。倒さなくてはならない相手だ」
「そうだぞ。目の前のことに集中しろ。でないと死ぬぞ」
「どんだけ頑張ったところで死ぬ未来しか見えないけどねえ」
「わかってるさお前たちに言われなくとも」
そう話す彼らの前には禍々しいナニカがあり、それは明らかに彼らに殺意を向けていた。
「お前を遥かに越える実力を持っていたゼロが魔獣化したというのはいささか絶望しか感じられないのだがな」
「倒せなくても封印すれば数百年は持つはずだよ。その間に対抗策は考えればいい」
「対抗策なんて君らが産まれる前から考えられてるけど実際成功した試しないけどね」
禍々しいナニカが彼らに向かって魔法らしきものを放つ。
「波動砲っ!」
「魔法剣術拾壱ノ型<天聖開刃>」
「ヘル・ドラド」
彼らからも魔法のようなものが放たれ相殺していく。
しかしその魔法は物凄い威力で、彼らは飲み込まれ―
***
「悠斗!起きなさ~い!」
ベッドの上で気絶するように寝入っている少年、もとい悠斗を揺さぶっているのは悠斗の幼馴染で、ご近所さんで、恋人のルミだ。
「悠斗が起きてくれないと私が朝ごはん食べられないじゃないの~!」
「自分で作って食べればいいだろ」
「私が作ったらどうなるか知ってるでしょ!」
「自慢するなよ……昔はまともな料理作ってたのにな」
「昔は昔、私は今を生きる女なの」
「それは全く言い訳になってない」
つい数日前、悠斗が忙しそうだったのを見てルミが夕食を作ったら木炭のような食事が出来上がったことを当然ルミも悠斗も覚えている。
「うるさいなぁ……わかったからあと5分だけ」
「絶対それ起きないやつじゃん!?」
というかルミが起こし始めてからすでに30分が経過している。
「起きたらキスしてあげるよ」
しかし悠斗は反応しない。
「じ、じゃあ起きたら私の……そ、その、お、おっぱいを触らせてあげる」
それでも悠斗は反応しない。そしてルミはふと我に返った。
「わたしただの変態じゃん!?」
端から見れば情緒不安定のヤバいやつである。頭をかきむしったため折角とかした髪の毛が絡まって大惨事でになりルミは余計に悲鳴をあげる。
「早く起きてよ!もう!これ以上はわたしが学校に遅れちゃうじゃん!もう知らないからね!一人でジムリーダーに怒られてよ!」
すると悠斗がガバッと起きた。
「それはマズイ」
「なんでそれで起きるのよ!」
ルミが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ジムリーダーにだけは怒られたくない。タケノコならいいけど」
ルミもそこは同意するが、あんな恥ずかしいことを口走った挙句、起きた理由がほかのことときた。というか自分のキスやおっぱいよりもむさ苦しい先生に怒られるのが嫌で起きるというのはなんとなく癪に触る。
悠斗は食パンを一枚とると食パンを飲み干して制服を着て外に出た。
「パン食べるの早すぎない!?」
「覚えておけルミ、パンは飲み物だ」
「絶対に違うからね!?」
ルミは食パンを口にくわえて鞄を手にもって走り出した。
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