ある日裁判所からお手紙が届いた話
カフェ千世子
ある日裁判所からお手紙が届いた話
金曜日の夜
仕事も終わって、ご飯も食べて帰宅。冷蔵庫のスイーツでも食べて、明日更新分の小説でも書こうと意気揚々と玄関を開けて、ポストをいつも通り確認。
不在連絡票が入ってる。
こないだ紛失したクレジットカードはすでに再発行して届いているし、なんだろう。心当たりがない。
差出人の名前を確認。
『〇〇〇〇地方裁判所 〇〇支部』
はっ? はあ⁉ はああああ⁉
と、リアルになる。本気の本気で心当たりがない。
関西の人間なのに、関東の地名の裁判所からお手紙が届くこと自体が不思議。
すぐに思いついたのは、詐欺。そもそも、これは本物か?
特別送達のところにチェックが入っている。特別送達って何?
全然わからないんでググる。裁判所から届く郵便物が特別送達で届くらしい。
ふむ。とりあえず、本物の裁判所からのお手紙である。
と言うことは、私の個人情報を使って誰かが借金をしているのか?
あまりにわけが分からな過ぎて、とりあえず心でファイティングポーズをとる。
誰かとこの憤りと疑問をを共有したくて、実家の家族のLINEに不在連絡票の写真を送り付ける。
なにが解決するわけでもなく、家族と特に発展しない会話をした後、モヤモヤし過ぎてなにも手につかなくなる。
ツイッター見たり、検索したりして時間が無為に過ぎていく。
深夜を回った頃、ようやく動き出して風呂に入ってマギレコデイリーミッションを消化して、小説を書きだす。
小説書き終わって、予約投稿をしてから就寝。
土曜日
この日は午前は美容院の予約、午後からはワクチン3回目の予約を入れていた。予定があるのにと思いながら、合間を縫って郵便物を取りに行く。
美容院でのヘアカットを終えた後、郵便局へ行く。
受け取って、すぐ確認したくなるのを堪えて、家まで帰る。封筒にしっかり〇〇〇〇地方裁判所〇〇支部と書いてある。債権執行係のところにチェックが入っている。
帰宅。封筒開封。
『催告書』
えー、何々? 当事者 別紙債権差押命令記載の通り?
別紙! 別紙チェック!
『債権差押命令』
わーーーーー! 本当に書いてあるーーーー!
怖いので、まずはパラ見。
『オリックス債権回収株式会社』
わーー! こんなとこで、推し球団の名前!
ページをめくって、金額が目に入る。
一、十、百、千、……9千万? ほぼ一億やん! などと混乱したことを思う。
もう一ページめくって、差押金額が250万? なんだ? 金額が違う?
改めて丁寧に読んでいく。
私の名前の上に書いてある名前、これ、見たことある……
賃貸契約を更新した時の書類を出してきて見る。
やはり、貸主の名前だ。
あれ、どういうことだ。とわからなくなったので、同封されている書類を全部チェック。
『まずお読みください』
……これが一番最初に読む書類ですやん。
えーと、債務者が大家で? 第三債務者があなた――つまり私。
で、家賃が差押えされた、とな?
『ところで、あなたのことを第三債務者と表示していますが、これは法律によって定められている呼び方で、あなたが《所有者》に賃料を払う立場にあるためにそのように言うだけで、《債権者》と《債務者》との間のお金の支払いをめぐる争いには直接は関係ありませんので、ご安心ください。』
おお。ここで、ちょっとひと安心。
で? まとめると
・家賃を大家に支払ってはいけない
・陳述書なるものを提出
・供託をした場合には事情届を提出
陳述書、これは出さないといけないっぽいが、書き方がわからない!
供託って何? 供託書正本って何?
私、これ差押え金額に達するまで引っ越しできひんの? それ、いつまでかかるんよ。(計算したら8年以上かかる)
わからないことが多すぎる!
とりあえず、管理会社に連絡。
「私が支払った家賃ってちゃんと振込できてますか?」
「会計担当は月曜日まで出社しません」
そうですか。この書類が届いたことを伝えたかったのに、混乱して全然違うことを聞いてしまった。
とりあえず、月曜日に仕切り直しだ。
家族にまずお読みくださいの写真をLINEして、大家が借金返せなくなって私の家賃が差押えされたらしいよと知らせる。
母はすぱっと理解できなかったのか、「これあんたの借金になってないか」と電話がかかってくる。
そうじゃないって。
「警察に相談したら?」
うーん。警察に言うにはお門違いな気もするが、消費者センター辺りを紹介してくれるかもと思って、その意見に従う。
ワクチン接種に行く。待ち時間に気を落ち着かせるために、ネット小説を読む。レビュー書くだけの頭が回らない。
ワクチン打って、待機時間もネット小説読む。気もそぞろ。
気を紛らわせたくて、パン屋と100均に行く。100均でポケモンデザインのお掃除シートを見つけて全種類買う。
警察に向かう。
「こういう郵便物が届いたんですが、どこに相談すればいいんでしょう」
尋ねたが、警官達も困惑。
「おそらく、詐欺の類ではないですね」
「裁判所と大家さんに連絡するのがいいんじゃないですか」
まあ、そうですよね。警官と同意して、警察を出て、帰宅。
とりあえず、副反応に備えて今日は寝る。
日曜日
副反応に地味に苦しみながら、野球見たり、ネット小説見たり、力尽きて寝たり、ネット小説見たり、力尽きたり……
寝てたら、母から電話。何を話したかはもうあまり覚えていない。
「とりあえず、土日は裁判所に連絡もできないし、管理会社の会計の人も月曜日にならないと出社しないから……」
あとは、副反応がしんどいかどうか受け答えしたような。その後、力尽きて寝る。
食欲はあったが、しんどくて食事の用意はできない。カップうどんとかアイスとか食べてスポーツドリンク飲んで寝た。
月曜日
だるいなー、と思いながら起床。体温計ると、平熱。
しょうがない、会社行くか……とダラダラ準備。
仕事の合間を縫って、裁判所に電話。
「差押命令と言うのが届いたんですが、陳述書の書き方が全然わからないんです」
「設問に沿って書いてもらえれば……」
「大家から直接借りてるんじゃなくて、管理会社から借りてるんですけど」
「ああ~……少々お待ちください」
裁判所の人は結構丁寧で優しかった。疑問にもすぱすぱ答えてくれた。
陳述書の書き方も分かった。
差押家賃の支払い方法は管理会社を通して支払うと陳述書の裏面に書けばいいと教えてもらった。
供託というのがさっぱりわからなかったのだが、大家から複数の部屋を借りるなどしてると、今回の書類が複数来るらしい。
今回は書類一通しか来てないので、供託はないということで、事情届の提出はいらないとのこと。
「私、この差押金額になるまで引っ越しできないんですか?」
「いえいえ。そんなことないですよ」
引っ越しの自由が保障された。
仕事の合間を縫って、管理会社に電話する。
こんな書類が裁判所から届いたんですよとお知らせする。確認しますので折り返しお電話しますとのこと。
仕事しながら待つ。
管理会社からのお返事。
裁判所と債権者双方に確認をとったとのこと。
「言ってることが双方微妙に食い違ってるんですよ」
「ええ~~?」
「裁判所は債権者に支払うように言ってるんですけど、債権者の方はとりあえずお金をプールして置いといて欲しいそうなんですよ」
「ええ~~?」
「で、どうしますか?」
どうとは?
「このまま管理会社にいつも通り家賃を支払ってもらって、こちらで預かる形もできますし、お客様の方でそのままお金を置いといてもらう形もできます」
「それ、私が決めるんですか?」
「はい。あ、お金を置いとく場合でも管理費はこちらに払っていただきます」
ややこしいのは嫌いだよ!
管理会社に払って、さらに債権回収会社に払って、ってそんなわざわざお金のやり取りを増やしたくないです! それに自分で持ってたら使ってしまいそう……
『管理会社に家賃として支払って、管理費を除いた額を回収してください』
と回答して提出!
このまま続報がなければいいなあ。
まとめ
不動産経営って大変やね。
この賃貸マンション、関西に大型台風来た時にあっちこっちぶっ壊れてたのよな。それで修繕費かさんでしまったんやろか。
ネット検索しても今回のような出来事を書いた記事に出会わなかったので、自分で書いてみました。
ある日裁判所からお手紙が届いた話 カフェ千世子 @chocolantan
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